はじめに
このHPは鋼の熱処理について解説しており、いずれも長い文章ですから、スマホよりもパソコンのほうが読みやすいでしょう。
特定の記事を見つける場合は、サイトマップのページやサイドメニューの「熱処理ページの目次」のリンクから関係ページをご覧ください。
熱処理を学ぼうとする人に
「熱処理はわかりにくい」ということをよく耳にします。
その一つの原因は、(このHP記事もそうですが) 目に見えない変化が多いことと、書かれている内容が実際の品物に対応していないことかもしれません。
例えば、多くの熱処理試験データは10mm丸棒のような小さな試験片を用いて、大きさの影響を受けにくいデータを紹介されるものが多いのですが、実際の品物はもっと大きいものが多いので、それを水の中に入れて急冷しても、冷却速度が全く違って、得られる硬さや組織化は小さい試験片のデータ通りにはなりません。
そして、品物の硬さを測定でも、通常の硬さ計(硬さ試験機)では、品物の表面中央などと測定できる箇所は限られていますので、製品が仕上がったときの硬さが低くなってしまったり、製品の寿命が短くなってしまうことも生じてしまいます。
大きな品物のデータは作るのも大変ですし汎用性も乏しいので、ほとんどデータはありませんから、結局は「わからない」で終わってしまうかもしれません。
つまり、熱処理がわかるということは、個々の品物に対してではなく、小さな試験片のデータから大きい通常の品物に対しての状態を推定することができるようになることと言ってもいいでしょう。
しかしこれには広範囲の熱処理の内容を知る必要があるために、そこまで到達するのは大変なことでしょう。
そしてさらに、適当な市販の書籍(教科書)がすくなくなってきていることも問題です。
鋼についての技術や熱処理が活発に研究されたのは1980年代までで、それ以降は、技術的な進歩で鋼製品の品質は上がっているものの、基礎理論などは進展していませんから、書籍の内容もありきたりになる傾向になっていくのはしかたありませんが、このHPの随所で紹介する書籍もご覧いただくといいでしょう。
ただ、その1冊の日本熱処理技術協会さん編集の「熱処理ガイドブック」の基礎編をとっても、約250ページに次のような多くの項目があるので、簡単に理解できるものではないことをご承知ください。(実際の目次とは違います)
1.鋼材の履歴・鋼種選定(25ページ)
2.鋼材の特性を活かすための熱処理(21ページ)
3.鋼の状態と組織(31ページ)
4.熱処理加熱装置と温度制御(27ページ)
5.熱処理作業・表面熱処理作業(51ページ)
6.熱処理欠陥と対策(27ページ)
7.工具鋼の熱処理(31ページ)
8.鋼材の試験(19ページ)
これだけ学んでも「基礎」レベルというのです。
ちなみに、私のHPも約50ファイルありますので、特定の熱処理用語について知りたい場合はサイトマップ(→こちら)で探した内容を拾い読みするか、用語の説明のHP(→こちら)と合わせながら読んでいただくのがいいでしょう。
PR以下に、記事の全体イメージと主な項目を書き出しています。太字の項目は、関係ページにリンクしています。
このHPの全体像とページへのリンク
01.鋼と鋼の状態を理解しよう
02.焼入れ・焼戻し
03.焼なまし
04.熱処理設備
05.硬さ試験
06.工具と工具鋼
07.材料試験
08.感覚と温度
09.火花試験
10.熱処理の不具合
11.表面熱処理
12.顕微鏡組織
13.硬さ値の換算
14.その他
全体を把握できる書籍を1冊購入しておけば理解しやすい
1冊で理解は大変ですが、熱処理全般を把握できれば理解も早いでしょう。 オススメ書籍を紹介します。 熱処理ガイドブックは熱処理従事者を対象にしたもので、理論的なことまでを含んだ内容で、もう1冊は、多くの熱処理を手掛けている不二越さんの技術者が書いた現場的な内容を含んだ解説書です。これらは大手書店にもありますので、ぜひ手にとってご覧になってみてください。
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熱処理作業をイメージするための動画を2つ
日本刀の焼入れをTVでご覧になった方もおられると思いますが、ここでは、熱処理作業をイメージしていただくために2つの作業例を紹介します。
現在は、このような「高温の品物を間近にして熱処理する例」は少なくなっているのですが、これらは熱処理作業のイメージがよく分かる例です。
(リンクをクリックするとYUTUBEの動画を見ていただくことができます:[協力]第一鋼業)
(1)ソルトバスでの焼入れ
(2)縦型炉での型鋼の焼入れ風景
(1)左はソルトバスによる手作業での焼入れ作業です。
850℃程度に加熱したソルトバスを使って、薄い鋼板を加熱して、それを水に入れて焼入れする作業風景です。
熱処理の基本は、加熱と冷却です。
(2)右は、 鍛造用の金型素材を大気炉で加熱し、油冷して硬化させる作業風景です。自動化された加熱設備を使っていますが、小ロット品なので、運搬や焼入れ操作は、作業者が手動で操作しています。
大きな型鋼の焼入れ操作は、冷却までに時間がかかりますが、これが実際の現場の熱処理です。
実際の熱処理作業には、焼戻しや検査などの様々な作業工程があります。
→サイトマップへPR