火花試験をやってみよう

火花試験の便利さ

火花試験方法については、JISに規定されて詳しく解説されていますが、近年、熱処理技能士の実技試験が写真判定に変わったこともあって、実際に火花試験ができる人は今後さらに急激に減っていくように懸念しています。

火花試験の目的は、過去には「鋼種判定」であったのですが、現状の鋼種の多様化や高合金化の傾向を見ると、その目的以上に「異材判別」に利用するのが有用性が高いと考えて、HPの内容を書き換えました。(H30.9)


現実的には、JISに示された、火花試験方法によって鋼種判定する技術を習得するのは、かなりの訓練が必要で、当社の熱処理技術者の例ですが、技能士資格を得ようとする人は、試験に備えて、その実技の習得にかなりの時間を割いていたのですが、試験方法が変わって、その勉強をする必要がなくなったことで、今では、丸暗記方式の勉強に変わってしまい、実技練習をしなくなりました。

火花試験方法や鋼種判定は、JISに定めたものが基本と言いつつ、はっきり言って、これを習得するのは至難で、さらに、試験設備ときっちりとした指導者がなければ難しいと思います。

熱処理技能士がたくさんいる当社でも、多くの人は蛍光X線分析機を使用するように変わってきており、判定の責任などを求められると、火花試験をしなくなるのは当然の成り行きで、衰退するのは目に見えています。

現状はともかく、火花試験の長所は1)簡単にできる 2)費用が安い という点が挙げられますので、これを使わないのはもったいないことですので、概要を知っていただき、利用してほしいと思います。

当社は現在でも、スクラップ廃材を鋼種別に選別するのに火花試験をしています。
これは、廃材を鋼種ごとに選別すると、非常に高価にスクラップが売却できるためで、短時間で処理できる「火花による分別」は欠かせません。
言い換えると、このような作業には、蛍光X線分析計を使うよりも便利だということですので、この火花試験についてのエッセンスだけでも覚えておいて損はないでしょう。

極端に言えば、どのようなグラインダーでも、1つあればできます。

火花試験をすれば、「この鋼は、焼入れして硬くなるのか?」「焼入れできる鋼種なのか?」・・・などを見分けることも可能ですし、少し専門的に学べば、鋼種(成分量)の特定だけでなく、品物のロット中に「異材」が混入した場合などに、その異材を特定できる・・・だけではなく、例えば、火花を見るだけで、鋼材の品位や熱処理状態の違いなども分かります。

言い換えると、そのように、成分や鋼の少しの違いが「火花の違い」になって現れるということです。

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ここでは、JISに沿った方法を1から説明するのではなく、簡易的に材料を判別(区別)するために必要なポイントを紹介します。もっと詳しく知りたい方は、JISの火花試験方法などの書籍を参考にしてください。


◎火花試験以外の異材判別の見分け方も重要です

もしも異材が混入すれば、品物がオシャカになるなど、非常に大きな問題になります。

だから、熱処理業者だけでなく、熱処理依頼者も、異材が混入しない・させない対策は重要なのですが、絶対に、あるロットに異なる材料(異材)が混入しないという保証はありません。

そこで、火花試験は、異材判別に大きな威力を発揮するのですが、その前に、それ以外の方法で鋼材の違いが判別できるということを頭に叩き込んでおいてください。

五感を働かせると、鋼のあらゆる状態で異常を感知できます。

異材が混入したとすれば、鋼種の違いを見分ける基本は、「比べること」です。何か違う点が見つけることができれば、大きな損失が防げます。

機械加工をする時の感触、露天に置いた「サビ具合」「サビの色」、大きな品物であれば、品物をマグネットを利用して品物を吊ったり固定するときの、わずかな吸着力の違い・・・これらは、常に意識を持って作業していれば違いが感知できます。
この中で、特に、熱処理前の機械加工中に異材混入が回避できる例は多いのです。

(1)機械加工した時の、肌の仕上がり状態や色(光沢)の違い (2)切削音や削れ方の違い (3)切子の出方の違い・・・などは、作業者は必ず気づいています。それを異材混入回避につなげられるかどうかがポイントになります。

熱処理現場でも、焼入れをした後の空冷中の冷え方や冷却槽から取り出したときの表面肌や色、表面状態の違いなどは、注意しておれば「何か違う」と感じます。もちろん、 熱処理後の硬さを比較すればそれがわかる場合もあるでしょう。

これらは、比較的顕著に現れるのですが、異材混入など「不適合に対する意識」がなければそれを知覚できませんので、指導者であれば繰り返し教育するなどで反復しておくのが効果的ですし、誰でも、このことを、常に頭の中に叩き込んでおくことは無駄なことではないでしょう。

ともかく、異材が混入すると大変な問題ですので、その意識を持つ・持たせることは大切でしょう。

そして、その上で「火花試験をする」・・・という手順がいいと思います。

  

火花試験のやり方(エッセンス)

正式にはJIS G 0566の「鋼の火花試験方法」によって行います。しかしここでは、JISの方法をマスターするのは、特定の方のみにして、ここでは、「鋼種の違いを見分ける」ということを主眼に考えて説明します。

ここでは、まず、とりあえずやってみよう・・・というレベルの説明になります。

火花試験は、グラインダー(砥石)を調べたい品物に当てて火花を観察して、その火花の形、色、量などで鋼種を分類しようというものです。

しかし、正しい判定をしようと思えば、JISに沿って砥石の種類や回転数などの条件を定める必要や環境までを整える必要がありますが、ここでは、それを説明するものではなく、異材混入の排除というレベルですので、エアグラインダーでもディスクグラインダーでも何でもいいので、 削って火花が出るものを用意してください。


まず、太陽光が直接入らない「薄暗い」場所で、砥石を鋼に当ててその火花を見ます。

この時、錆びや黒肌の部分ではなく、金属光沢のある、できれば、少し掘り込んだ面で観察するのが原則です。

すると、鋼種(成分)特有の火花を観察することができます。

しかし、(何度も言いますが)鋼種の特定までは難しいです。
当社では、匠レベルは別にして、成分(鋼種)を特定する方法は、成分がわかった鋼材を用いて比較判定するのですが、山本科学工具研究社という会社で標準的な鋼種の試験片を販売していますので、高価ですがそれを用いて比較して材料判定する方法もあります。

しかし、おすすめしません。現状は、鋼種があまりにも多様化していますし、メーカー(製造履歴)や熱処理状態などで火花の状態が変わります。結局は鋼種判定は高度の経験と技量が要求され、訓練が必要ですので、熱処理業や製鋼業など、専門業種以外におすすめしても無駄な感じがするためです。

火花の見分け方のポイントを紹介します。もちろん、文字ではよくわからないと思いますが、少し経験すれば出来ますので、ぜひ、トライしてください。


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花の咲き方で炭素量(C%)を推定する

火花の見方1

火花試験をする目的の一つに「焼きが入る鋼かどうかを見分ける」ことがあります。それを決定するのは主として「炭素量」です。

ナイフのような薄い品物であれば、炭素量が0.6%程度以上あれば、 60HRC程度の、ナイフに必要な硬さが焼入れによって得られますので、それを見分けられるようにしてみましょう。

少なくとも、①では焼入れ硬化しません。
①②③の炭素量(%)を見分ける練習は難しいですが、成分のわかった鋼材を用意するのであれば、SS400・S45C・SK85の3種類のテストピースを購入する程度で練習できます。

ここでは、長く飛んだ流線の先端の「花の咲き方(破裂のしかた)」がポイントです。

①では炭素量が少なすぎて焼入れ硬化しません。④⑤も、比較的市中に出回っている鋼種で、火花を見ると、明らかに合金成分の多い鋼だということがわかるでしょう。

合金元素が加わると、合金元素特有の火花が観察されます。
JISなどではいろいろとその見分け方を書いているのですが、合金元素の量によって、炭素特有の火花の見え方が変わってきますし、何よりも、近年は、含まれる合金の種類や量が広範囲にわたっていますので、専門家でも「火花を見て鋼種を判定する」ということは難易度が高くなっています。

ともかく、「鋼種を特定する」というのではなく、「違いがあるかどうかを見分ける」ということを主眼にすることで考えておくのがいいでしょう。

少し、別の写真を見てください。これは、グラインダーで削ったものではなく、粉にした鋼材を、バーナーで燃焼させたときの写真です。(資料は1970年代の、電気製鋼研究会編の特殊鋼便覧から引用させていただきました)

火花の見方2

この、長く伸びた細い線を「流線」、先端に咲いた広がった花のような部分を「破裂」と言います。特に、 破裂部分に小さく枝分かれした花がたくさん咲くものは焼入れして硬くなりそうだ・・・と判断できます。

写真の④⑤⑥などのように合金成分が入ると「破裂」部分が小さくなって、惑わされるのですが、グラインダーをきつく当てて長い流線を作っる場合と、 緩く当てて、できればグラインダーの回転が止まる前に「破裂」部分を見てやると、枝分かれしている様子が見えますので、 納得するまでゆっくりやることがポイントです。

②③は、炭素鋼で水焼入れして硬化する鋼種です。
④のクロム鋼は油焼入れで焼きの入る鋼種です。
⑤⑥については、合金成分が多いので、 他と違って赤っぽい火花になります。
⑥は、ほとんど火花が飛びません。

C%量と焼入れ硬さの関係があります。こちらでおおよその推定ができます。

④⑤⑥にはクロム(Cr)などの合金元素が入っていて、炭素による「花」と少し違った形の花が見られます。特に⑤⑥などは合金量が多いために、 流線が短く、暗い色の火花になりますが、現実的には、1つだけの鋼種を見てそれの鋼種名を判別するのは大変難しいのですが、何となく、違う感じに見えるでしょう。

先にも書きましたが、これがわかるようになるまでには、すでに成分のわかった鋼種を使って、何度も何度も訓練しないと鋼種判別までにたどり着くことは難しいのですが、 とりあえず「鋼材として使えるかどうか」という判断や「これとこれは違う」と判定するのは比較的簡単ですので、だれにでもできますので、簡単なグラインダーがあれば是非トライしてみてください。


◎・・・とはいっても、実際には難しい???

蛍光x線分析計

このように、火花試験は決して難しくない・・・のですが、それでも、道具や試験環境がいりますし、実際にやろうとすると、成分がわかった標準試料を準備して、 それを用いて練習をしないと鋼種判定ができるまでにはなりません。
だから、専門家でなければ、ここに書いた「違いを見分ける」だけでいいと思いますので、この火花試験をうまく利用してみてください。

当社では、近年は蛍光X線を利用した分析計を用いて判定するケースが増えているということを紹介しましたが、これは写真のような装置で、取り扱いも簡単で、安全対策も施されており、保管場所を管理しておけば、資格がなくても誰でも使えるものです。

測定値の記憶や鋼種判定機能もあって、数秒で成分値と鋼種を表示してくれます。
この便利さもあって、今後はこれによる判定が主流になっていくでしょう。

ただし、分析できる元素に限りがあり、鋼で重要な炭素量などの主要な元素の分析ができませんが、それでも、測定できる範囲の元素の量から鋼種を推定して表示してくれる優れものです。
やはり「お金をかければそれなりの成果がある」のですが、これよりも火花試験は「早い」「安い」ですので、ぜひうまく使いこなしてほしいと思います。


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