第一鋼業株式会社~熱処理用語

冷やしバメ・焼きばめ   [h19]

冷やし嵌め・焼き嵌め、冷やしばめ・焼きバメなどとも表わされますが、同じものです。

入れ子(なかに入る側:内輪)になる品物を液化炭酸ガスや冷蔵庫などで冷やして寸法を小さくして嵌め合わせる方法が「冷やしばめ」で、これに対して、外側の品物(外輪)を加熱して寸法を大きくして嵌め合わせるのが「焼きバメ」です。

内輪の外径を、外輪の内径よりも大きく加工しておいて、内輪を冷やして小さくするか、外輪を温めて大きくしておいてはめ込んで、熱による膨張収縮を利用して2つを合体します。

リングの焼き嵌めの参考図

これらを行う目的としては、
①2つの材質の違うものを一体化させる
②内輪に強い圧縮応力を加えて、強くする。
などがあります。

広がり方は膨張率で決まる

鉄鋼の線膨張率は11~12(x10のマイナス6乗)程度なので、温度差が100℃で品物が100mmであれば、0.11~0.12mm伸縮することになリます。

厳密に言えば、この線膨張率は温度域によって異なるのですが、熱処理用途では、そのような厳密な数値はあまり必要ではありません。また、経験的に言えば、「体膨張」ということでは考えなくていいようです。この程度の数字で充分使えます。

この熱収縮を利用して2つのリング製品などを結合するのが「冷やしバメ」で、熱膨張を利用するのが「焼バメ」です。

上の図で言えば、Aのリングを冷やしてBにはめるのが「冷やしバメ」で、Bのリングを加熱して、そこにAのリングをはめるのが「焼きばめ」です。

外径A>Bの内径 にあらかじめ加工します。その寸法差が「締め代」です。

一般的に、ひやしばめ(焼きばめ)をした時に、品物の作用面に圧縮強さが高まるようにすると割れなどに強くなります。
反対に働き面に引張応力が加わると破損しやすくなリます。

そのために、働き部分に引張応力が生じないように、肉厚や体積の形状を設計しなければなりません

また、締め代の大きさは、内外輪をはめ込んだときの応力の大きさになるので、弾性限界内で締め込まれるようにして、降伏範囲を超えないように、大きくしすぎないようにしなければなりません。

また、締め込む力が大きくなると、品物が(弾性変形内で)変形します。このため、内径の寸法が小さくなったり、外径の寸法が大きくなります。

精密部品で焼きバメ、冷やしバメをしたあとに仕上げ加工をしない場合でも、原理的には寸法変化が生じるので、それらを勘案して「締め代」を決めなければなりません。

さらに、加工寸法には注意しなければなりません。
冷やしバメの場合は内輪を大きく加工しておいて、内輪を冷やしますし、焼きバメは外輪を小さく加工しておいて外輪を加熱します。

焼きバメで大きな締め代を取る場合は、加熱して充分に広がってくれるのかどうか不安になるのですが、心配しないでも、膨張率の計算どおりになります。


冷やしバメはドライアイスや液化炭酸ガス

冷やしバメは液化炭酸ガスやドライアイスが用いられることが多いのですが、それを用いると-70℃程度ですので、常温が20℃程度とすると、上記数字(100mmで0.1程度)と、締め付け強さや「締め代」は限定されます。このため、大きな締め代を取りたい場合は焼きばめが有利です。

締め代が大きいと締め付けによって品物の寸法が変わります。その場合は、研磨加工などで修正しなければならない場合も出てきます。

また、比較的大きい締め代で焼き嵌めをすると、内径側部品の硬さが上昇することも確認できます。応力=硬さですので、圧縮強度の高まりを実感できます。

常温が30℃であれば、炭酸ガスを用いると温度差は110℃程度(液化炭酸ガス温度+室温)になリますが、これは、140℃程度(140℃-室温30℃=110℃)の焼きバメをしても同等の寸法差が得られるということです。

この温度程度では焼きばめのための空気中での加熱をしても、酸化被膜や着色もほとんどないのですが、冷やし嵌めのほうが焼きばめに比べて精密加工であるように考えられている感があります。(焼きばめは、荒っぽいという感じを持たれています)

当社では。品物の焼戻し温度がわかっておれば、大きな締め代を得やすい「焼バメ」を利用することが多く、両方をやってみるとわかるのですが、冷やしバメをする場合は、品物に霜がつくので結構やりにくく、指定がなければ『焼きばめ』をするほうが簡単です。

また、俗にいう「口が開く」という現象にも注意します。

これは、締め代が大きくなると、円筒状の品物では、端面部の締め方が弱くなる傾向にあるので、端面部分が充分に締まらないということがあるのですが、「太鼓状」に加工するなどで対応したり、計算で加工寸法を決めることも可能ですが、これはノウハウが必要な世界でしょう。


  

注意する点もあります

冷やしバメをする場合に、焼入れ鋼などでは低温ぜい性の影響や残留オーステナイトのマルテンサイト化に注意する必要があリます。

品物を冷やすとじん性が低下します。これを「低温脆性」といいますが、高炭素で高い硬さの焼入れ鋼の多くはこの影響を受けます。

また、組織変化を生じる可能性があリます。

特に、SKD11などの高合金工具鋼は、通常の焼入れでは、未変態の残留オーステナイトが20%以上残っていますので、冷やしばめをする際に低温にしたときに、マルテンサイト変態が生じるなどの組織変化が起こる場合も多く、品物が予期しないで割れるなどの問題を考えておかなければなりません。

機械関係の技術者にはそのような温度変化や組織変化を知らない方も多いようですので注意しなければなりません。

これは「低温脆性」の影響と「組織変化」による熱処理変態によって、品物がもろくなりますし、寸法変化も生じます。

ほとんどの工具鋼などでは、品物を室温以下に冷やすと、衝撃じん性が急激に低下します。このため、低温下では、非常に割れやすくなっていると考えておかなければなりません。

もしもそうなれば、一般的には品物の体積が膨張するので、変形したり、不均一な応力状態になったり、極端な場合は割れることもあるので注意をする必要があります。

このこともあって、当社では、冷やしバメより焼きバメを採用することが多いという理由の一つです。

もちろん、この場合には、熱処理済みの品物は焼戻し温度以上に温度をあげないようにします。

通常、SKS3やSKD11のような高硬度材料でも、180℃程度の焼戻しが行われているはずで、特に150℃程度の加熱による問題はないのですが、高硬度の品物を焼きバメや冷やしバメをする場合には、熱処理の履歴を確認するようにします。


↑記事のTOPに戻る


(来歴)H30.11.12 文章見直し R1.10 説明図追加 R2.4 見直し・CSS変更

用語の索引一覧へ

あ行 あいうえお
か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ

スポンサーリンク


HP紹介

鉄鋼の熱処理全般について紹介
せん断刃物技術の基礎事項を紹介
第一鋼業のHPとお問い合わせはこちらから

↑記事のTOPに戻る