低温脆性(ていおんぜいせい) [t13]

【用語の意味】
室温又はそれ以下の温度で、衝撃値が急激に低下して脆くなる現象をいいます。
どんな鋼にもある現象で、極低炭素鋼やオーステナイト系ステンレス鋼などは-100℃程度以下でも脆化しないので、低温容器などにはこのような低温に強い鋼を使用するようにしなければなりません。

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【関連する用語】
  遷移温度 
【補足説明】

脆化温度が高いということは、その温度以下になると衝撃値が低下し、破壊しやすくなります。その破面は延性破面ではなく、脆性破面(塑性変形がない状態で破壊した状態)になります。
低温脆性のグラフ例 (鉄鋼の熱処理・日本鉄鋼協会編より)
この図は、0.2%Cの軟鋼におけるシャルピー試験温度とEの衝撃値の値、φが脆性破面率などが示されていますが、衝撃試験をする温度(試験片の温度)を下げていくと、 衝撃値が低くなっていき、脆性破面率が上がっていきます。つまり、破面が延性破面から脆性破面に変わっていって脆くなります。

ナイフなどが、例えば冷蔵作業中に簡単に欠けたり折れたりすることもこれが原因の一つです。特に炭素含有量が高くなるとその影響が大きいので、工具などを常温以下で使う場合は、意識しておくのがいいでしょう。

高硬度の工具や金型などは、冬場の早朝などでは室温が低下すると欠けやすいということが言われます。工具鋼などでは脆化温度などはほとんど検討されていないのですが、高炭素鋼は脆化しやすいので、この低温による脆化も一つの原因と考えられています。

これらの低温ぜい性の影響を受けやすい鋼に対しては、工具の温度を室温以下の温度で使わないようにして、われやすいものは予熱などで温度を高くして使用するのが鉄則です。
その他の対策としては、変形しにくいように厚さを増すなどの検討をする以外にはないようです。

逆に、鋼板のせん断などでは、この性質を利用して、品物を冷やして切り口性状を改善するということも考えられることかもしれません。

ここでいう「室温」は30℃程度と考えておくといいのですが、通常の工具鋼の試験は温度を意識することなく「室温」で行われていることになっています。
しかし、シャルピー試験の例を見ると、(焼戻し脆性や青熱脆性などの影響があるものありますが)一般的にはシャルピー値が上昇する傾向にありますが、低温で試験されたものは見ることはありません。高硬度の工具では、確実に0℃以下では「もろくなっている」と考えておいていいでしょう。
(鉄鋼の熱処理・日本鉄鋼協会編より)
この図は、 遷移温度に影響する合金元素とその割合を示してものですが、リンP、炭素Cなどはそれを上げるので悪影響があり、マンガンMn、ニッケルNiなどは、 それを下げるのでいいということで、低温容器に用いられるステンレス鋼などでは、それらを含めて成分などの影響が研究されています。 しかし、硬さや強度が必要な工具鋼などでは、C量が高いので、低温になれば衝撃値が低下するという影響は避けられませんが、残念ながら、工具鋼などの、 一般的に使用される鋼についての低温脆性に関連するデータはほとんどありません。

余談ですが、当社で0℃でのシャルピ-試験は行いましたが、工具鋼で温度を変えて試験したことの記憶がありません。
高硬さのシャルピー試験をしばしば行っていましたが、常に数値はばらつくので、あまりシャルピー値を信じていなかったこともあって、低温ぜい性までを思いつかなかったのですが、機会があればやってみたい気持ちもあります。

それはともかく、工具は30℃以下では使わないということは覚えておいて損はないですし、使うとすぐに摩擦熱で工具温度が上がりますので、使い始めは負荷をかけないということを考えておけば、かなり工具寿命が延びるはずです。



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(来歴)H30.12 文章見直し

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