空気焼入れ (くうきやきいれ) [k34]
空気中で放冷して硬化させる焼入れ法をいいます。(Air cooling)
焼入れ性の良い鋼種に適用する冷却方法で、大気中に放冷するか、扇風機(ファン)を使って少し速く冷却する焼入れ方法です。
ファンを用いる場合は、衝風(しょうふう)空冷(またはファン空冷など)での焼入れといいます。
冷間工具鋼SKD11は焼入れ性の良い鋼種の代表ですが、例えばφ100程度の大きな品物でも焼入れ温度から空気中に放冷することで60HRC以上の硬さになります。
このように、油冷などに比べて、ゆっくり冷やしても品物の内外が同じ硬さになるので、このような焼入れ性の良い鋼種は空気焼入れ鋼と呼ばれることもあります。
これらの鋼種は、油冷などの変形しやすい急激な冷却をしなくていいので、焼入れ時の品物の温度差による曲がり(歪)発生が少ないのですが、精密金型などでは「焼入れ性」の良いことは重要な条件です。
しかし、いくら「空気焼入れ鋼」と言っても、数百Kgもある大きな金型では、空冷では高い硬さが確保できなければ、空冷にこだわりません。
実際に熱処理作業では、充分に硬化させる必要のあるものは、空気焼入れ鋼であっても、品物が大きいものやじん性が必要なものは500℃程度までを油冷をして早く冷やし、焼割れや変形を防止するために、途中から空冷したり保温したりするなどの複雑な冷却方法をとります。
また、放冷よりも早く冷やしたい場合はファン(扇風機)を使って衝風空冷します。
PR近年、熱処理用として多く用いられている雰囲気炉や真空炉では、冷却に使用するガスは大気ではなく、窒素ガスが用いられることが多いのですが、この場合は「ガス冷却(ガス冷)」と言われます。
もちろん、それらの炉では、ガスの流量をコントロールして冷却速度を変えたり、さらには、ガスを加圧して大量に噴射することによって、油冷に近い速度で冷却できるタイプの炉も多くなっています。
このように、目的の性質を得るために、熱処理の方法をを変えて作業する場合はしばしばおこります。
カタログやJISには標準的な熱処理方法は示されていますが、それはあくまで標準で、目的の品質を得る方法は1種類ではないということが言えますね。
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