熱処理用語の解説

カスタムナイフの鋼材と熱処理       [k12]

趣味などで製作される、オリジナル形状、オリジナル仕様の高級ナイフをカスタムナイフといいます。


カスタムナイフ熱処理前カスタムナイフ熱処理前2
お客様作品1お客様作品2
  

これらの写真は、熱処理のお手伝いをした一部ですが、製作者さんのご厚意で写真を使わせていただいていています。

一般的に、ナイフに使用される鋼種は、①ダイス鋼系 ②ステンレス系 ③高速度鋼系などの高級鋼を使用されるものが多くなり、昔からのナイフの定番の炭素鋼系や低合金鋼系のものは少なくなっている傾向です。

もちろん、猟師さんや職人さんからのナイフの熱処理依頼もあって、そのようなプロの方は昔ながらの切れ味にこだわって、炭素鋼系や低合金鋼製のナイフの依頼もありますが、趣味のカスタムナイフでは、マルテンサイト系ステンレスが好まれたいる感じがします。

炭素鋼系の鋼種は日本刀の材料として知られるように、切れ味もよく、加工のしやすさとともに、焼入れ温度が800℃程度と低いので、熱処理的には扱いやすくていい材料なのですが、水焼入れをする必要があるので、企業が行う熱処理では敬遠される傾向は否めませんが、ソルトバスを使って、特別に、水焼入れをして要求にお答えしていました。

炭素鋼系などの低合金鋼はさびやすい欠点はありますが、焼入れ温度が800℃程度なので、家庭でも熱処理できるという楽しみ方もあるので、使い勝手の良い鋼種で、ダイス鋼やステンレス鋼系になると、専門業者に委託しないときっちりとした熱処理ができないのが短所です。

ダイス鋼系等は焼入れ温度が1000℃以上ですし、加熱雰囲気が悪いと、脱炭などが生じて表面硬さが出なくなることもあるので、自分で熱処理せずに、熱処理依頼されるのが無難でしょう。

仕上がりの硬さを意識しているといいナイフができる

マニアの方は高級な鋼種をつかってナイフづくりをしようという人が多いのですが、意外に、熱処理条件や硬さ、そして最終的な性能については、あまり吟味されていない人が多いようで、硬さの打ち合わせをすると、「他社では何も言わずに熱処理してくれていた」とおっしゃる方もおられます。

しかし、(これはナイフに限ることではありませんが) 人任せにしてはいいナイフができるわけがありません。

私の経験ですが、同じ硬さでも「何か違う」とか、硬さが出ているけれど、何か甘い感じがする … などの相談を受けることがあったのですが、日本刀のように、一本一本焼入れるのと違って、何本かをまとめて自動で熱処理をする場合が増えているので、いろいろな懸念が潜んでいますから、ともかく、材質と熱処理検査の硬さと切れ味や研磨の感触を自分で感じ取る癖をつけることをお勧めします。

これは、少ない紙面では説明が難しいのですが、熱処理をする側の実情をいうと、例えば、60HRCという硬さは、刃先先端の硬さではなく、硬さ測定ができるところ位置で測った硬さですから、使ってみたり研磨中に、「何か甘い」と感じれば、何かおかしいことが起きているということになります。

名刀といわれる日本刀の表面硬さを測定した資料を見ると、かなり硬さがばらついています。 これは、硬さというよりも、「使ってみて素晴らしい刀」ですから、それは自分でつかむ必要があります。

まず最初は、前に作ったナイフの硬さ値と使った時の感触を次に生かすだけでも素晴らしいナイフになっていきますから、熱処理屋さん任せにしないで、硬さの指定をすることをやってみてください。 硬さ指定や熱処理の要望を聞いてくれないところは敬遠したほうがいいと思います。

鋼の特徴(硬さと機械的特性など)について多く知るほど、出来上がった製品に幅が出てくるでしょうから、ぜひ頭に入れておいてください。

蛇足ですが、ナイフ類は銃刀法によって所持や使用が規制されています。 法令に抵触するものは届け出等の適切な手続きをしていただく必要もありますし、法に触れるサイズや形状のものは熱処理をしてもらえないこともあるので、熱処理依頼の際にはご注意ください。→こちらを参照


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用語の索引

あ行 あいうえお
か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ





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