焼入れ硬化層深さ…どこまで焼が入るのか [y02]
焼入れで硬化した層の深さを焼入れ硬化層深さ あるいは、単に、「硬化層深さ」といいます。
これは、全体焼き入れの用語ではなく、表面熱処理において、JISに、有効硬化層深さと全硬化層深さなどについて規定しているものですが、一般には、熱処理した品物を整形して仕上げた場合の硬さが重要ですので、その考え方を知るために、「焼入れ硬化層」について知っておくといいでしょう。
硬化層のイメージとJISでいう硬化層は違う
硬化層深さは品物の断面の硬さを測ればいいのですが、通常の熱処理後の検査では、表面検査のみの場合が多いので、硬化層深さ(硬化深度という方も多いようです)を測定する場合は、通常は、品物の断面を切断して、微小硬さ計などを用いて測定することになれば、費用も時間もかかります。
また、破壊する検査となるために、それを測定する試験片(試験用の品物)も必要になります。
全体焼入れした「調質品」では、品物内部の硬さに低下度合いは比較的小さいのですが、焼入れ性の低い鋼で最高硬さが欲しい場合や、高周波焼入れをした品物などで、しばしば、「仕上げ加工をして表面硬さを測ったら、指定硬さを外れている」というトラブルになることがあるのですが、これは、関係用語の意味を知っておかないといけません。
全体焼入れの用語ではありませんが、参考になるので同じように理解しておくといいのですが、表面熱処理における硬化層深さには4つの定義があります。
特に間違いやすいのは、「表面硬さがその深さまで維持しているのではない」ということで、このことを理解しておく必要があります。
関係する用語としては、次のものがあります。
1)有効硬化深さ:表面から限界硬さまでの距離
2)全硬化層深さ:焼入れ前の鋼材硬さ位置までの距離
3)最小表面硬さ:要求した硬さの最低値
4)限界硬さ:最小表面硬さx0.8
例えば、ある丸棒を高周波熱処理して、「表面硬さが60HRC以上で硬化深さが2mmほしい」とすると、表面から2mmの位置では 60HRC以下の場合もある ということを示しているものです。
つまり、「熱処理後に外径を4mm機械加工したときの表面硬さ(または、表面を2mm削った状態での硬さ)が60HRC以上必要だ」ということを依頼先にしっかりと伝えると誤解がないのですが、もちろん、申し出たものの、鋼種や設備的理由で、「それは無理」と熱処理を断られる場合もあるかもしれません。
ともかく、硬化深さ2mmの位置では、指定の硬さではなくて、それ以下の硬さになっている可能性があるということになります。
このような、「仕上げしろがあって、熱処理後に、仕上げた状態の表面硬さがいくらになっているのか… 」というのは、JISの言い方(用語)ではわかりにくいですので、熱処理前に納得行くまで確認するぐらいでちょうどいいのかもしれません。
(来歴)H30.12 文章見直し R2.4 CSS変更 R7.9月に見直し













