熱処理用語の解説

析出硬化(せきしゅつこうか) [s31]

高合金鋼などで、焼戻し温度を上げたとき、炭化物が凝縮(析出)して硬化することを析出硬化といいます。

高温焼戻しにおける500℃以上での2次硬化はこれを示す1つの事例です。


高合金工具鋼や高速度工具鋼などでクロムCrやモリブデンMoを多く含む鋼は、焼戻し温度を上げていくと焼入れ時の硬さは低下していくのですが、450℃の焼戻し温度では、硬さが上昇します。これが「2次硬化」ですが、鋼種によっては、焼入れしたままの状態より高い硬さに硬化する鋼種がたくさんあります。

YXM1 日立金属のカタログより プロテリアル(旧:日立金属)のカタログより

このYXM1はよく使用される代表的な高速度工具鋼ですが、例えば、540℃での焼戻しでは、焼入れ時の硬さ以上に硬化します。

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これは、残留オーステナイトの分解と、焼入れによってマトリックス(素地)に溶け込んだ元素が炭化物などとして素地中に生じる[析出する]ためで、これによって硬化します。

この、焼入れ時から焼戻し温度が高くなるにつれて硬さが低下しているものが、それ以上の温度で上昇することが「2次硬化」で、それをする焼戻しを、高温焼戻しと呼びます。

析出硬化型のステンレス(SUS630など)でも、溶体化処理後に450℃程度の温度に時効処理すると硬化するのも同様で、炭化物や金属間化合物の析出によって硬さが上昇します。


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(来歴)R2.2 見直し   R2.4 CSS変更   最終確認R6.1月

用語の索引

あ行 あいうえお
か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ

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