ジョミニー試験 [s19]
ジョミニ1端焼入れ性試験のことで、焼入れ温度に加熱した25mm径の棒の端面を水冷して、その外周面の硬さ推移で焼入れ性を評価する試験法です。
水冷による試験であるので、焼入れ性の高い鋼種などを評価するには不向きですが、構造用鋼は多くのデータがあるので同一条件での比較ができることで、焼入れ性を比較するには便利な試験です。
焼入れ性の良否は、表面の最高硬さの高さや焼入れ端(実際の品物では、表面)からの硬化深さを評価します。
硬化深さ(硬化深度ともいう)が深いということは、焼入れ性をよくする合金成分(Mn、Cr、Niなど)を含む鋼は焼き入れ端の硬さが高く、端部から離れる場合の硬さの低下が少ない・・・ということで、焼入れ性の劣る鋼は試験片端部の硬さが低いうえに硬さ低下が大きいということです。
だだし、試験片形状がφ25のために、SNCM439のように焼入れ性の良いものでは、水冷端以外の部分も、空冷で焼が入ります。
また、このような焼入れ性の良い鋼種は、水冷で焼き入れすると変形が多くなるなどで、油冷が標準になっており、水冷することはほとんどないので実用性のないデータかもしれませんが、この試験結果があることで鋼種間の比較ができます。
このように、構造用鋼であっても、適正焼入れ条件に沿う焼入れ性を評価できないのですが、焼入れ性を簡便に試験できるためにこの試験法は古くから用いられています。
PR同一鋼種でも製造履歴によって硬さ範囲に差が生じるので、その上下限を定めた「Hバンド」を示した「焼入れ性を保証する鋼種」があります。(→こちら)
これは例えば、普通のSNCM439に対し、SNCM439Hと、後ろに「H」が付加されています。
これらの鋼をH(エイチまたはエッチ)鋼といいますが、H型鋼(H型をした型鋼)や調質済み鋼でマルエッチ(Hの丸がこみ)で鋼種を表記する習慣もあるので、『Hバンド鋼(焼入れ性を保証した鋼種)』かそれ以外のものなのかを常に意識しておくのが良いでしょう。
近年の鋼材は製鋼技術が向上して、非常に均質で品位が高いので、古く制定されたJIS規格は時代遅れの感が強くなってきているように思うのですが、・・・。
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