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シーズニング         [s08]

鋳物では「枯らし(からし)」と言われる処理です。
鋳物の内部応力を低減させるために、長時間屋外に環境に放置することをいいます。

低温焼戻しをすることによって、その期間を短縮させるという熱処理操作をすることもあります。


Seasoning:英語の意味はいろいろあリますが、熱処理的には、「ならす(慣らす・均す)」こと・・・の意味ととっていいでしょう。

鋳物に場合で言えば、鋳物の溶湯(溶けた鋳物)を鋳型に鋳込むと、外周部から内部に凝固していきます。

その際に、絶えず凝固していない溶湯の成分は変化しながら凝固するので、凝固部位で成分や組成が異なっています。

これを凝固時の偏析といいます。鉄鋼の場合も同様で、これは品質に悪影響を及ぼします。

この偏析を少なくするために、鉄鋼では鋳込んだあとに均熱(ソーキング)、鍛造、圧延などによって、できるだけ均一な組織にする操作を加えられますが、鋳物ではそれができません。

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鋳物(鋳物製品)では、(可鍛鋳鉄などの特殊なものは除き)熱間状態の高温で均質化させるための操作を加えることはありませんので、凝固したときには、成分の偏析のみならず、不均一な応力状態になっているために、時間がたつとともに組織や寸法が変化します。

(参考)鉄鋼類の拡散現象を捉える方法の一つに焼戻しパラメータという考え方があります。(→こちらを参照) しかしこれは、均質なものの硬さ変化を捉えるのには有効ですが、鋳物のような物へ単純に適用するのは難しいでしょう。

この変化は、組織の変化やそれに伴う応力の変化ですが、変形(経年変化)したり、機械加工中やその後に変形や精度の狂いを生じる原因になります。

このために、数か月~数年の間、鋳物を屋外に放置して、自然に変形をさておくと、後に機械をしても、製品となってからの寸法の狂いなどが少なくなります。
これが枯らし(シーズニング)という作業です。

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これを人為的に(例えば600℃以下の適当な温度に)加熱することで変化を促進させて期間短縮させることも行われます。
(熱処理では、応力焼なまし、低温焼なましという方法です)

この場合は、原理的には、温度を高くするほうが変化を早められるのですが、加熱冷却時の熱応力が加わるなどもあって、逆に変形してしまったり、品物にならなくなる懸念もでてきますし、温度が低すぎると、効果が不十分になるということもあって、1品1様の鋳物製品では、その品物に合った熱処理条件を決めることも難しいことです。

このために、この枯らし(シーズニング)作業を単純に低温焼なまし等の熱処理作業に置き換えていいものかどうかは難しい問題です。

鉄鋼の焼戻し(あるいは焼なまし)は、品物全体の成分がほぼ似ているものの変化ですので、それは固溶体におけるフェライトとセメンタイトの層間距離が大きくなる拡散現象・・・というように説明できますし、その処理による温度の効果や影響は硬さを測定することなどによって確認することができます。

しかし、鋳物の場合は各部で組成や成分が異なっている場合がほとんどなので、品物の内部がどのような状態になっているのかも不明であることから、単純な熱の操作だけで応力除去や均質化ができるとは考えにくいという点があります。

この「枯らし」は、時間がかかるうえにその効果を試験などによって把握することも難しいのですが、昔から行われており、時間を掛けることで品質の良い機械が製造されてきたという考え方もできます。

それを、人為的に適当に熱処理してしまうと、ともすれば品物をおしゃかにする危険が伴ううえに、熱処理後の検査などによる熱処理の効果を判定自体も難しいことなので、簡単に熱処理で代用するというのは危険です。

長い間戸外に品物を放置する「枯らし」を「無駄だなぁ」と思うかもしれませんし、それを否定する考え方もあるのですが、これは昔からの経験によって行われているものですし、昔からの先人たちの知恵はそんな薄っぺらなものではないはずですので、熱処理で代替えしようとする場合は、しっかりと検討しないといけないでしょう。

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