サブゼロ処理 [s04]
通常は、焼入れ冷却時に、0℃以下に冷やす処理をサブゼロ処理といいます。
サブゼロというのは、0℃以下という意味です。
これは、その他の言い方では、「深冷処理」と言われる場合もあります。
このサブゼロ処理は、鉄鋼では、焼入れ直後に行うことで、残留オーステナイト低減による硬さ上昇や経年変化の減少などを目的に実施されます。
-100℃以下で行う処理をクライオ処理と呼ぶことが多いのですが、このクライオ処理をすることで、耐摩耗性や寿命の向上を謳うものもありますが、これらの効果については、今のところ、詳しいことはよくわかっていないのが実情です。
工具鋼などの焼入れ性の良い鋼は、焼入れ後に常温になっても、変態しないオーステナイト(残留オーステナイトと呼ばれます)が多く残リます。
これは、硬化していない組織が鋼中に残っている状態ですので、常温以下に温度を下げることによってマルテンサイトなどに変化させで硬さを高めたり、経年変化を起こす元凶の残留オーステナイトを軽減して、経年変化を少なくすることができます。
PR近年は、液化炭酸ガスや電気式の冷凍設備で-75℃程度に冷やす処理が主流です。 また、不定期に行う大型品のサブゼロ処理には、ドライアイスも使用されます。
この処理を行うタイミングは、焼入れ冷却に引き続いてこの温度に冷却します。
これによって、ほとんどの焼入れ鋼の残留オーステナイトは消失します。しかし、完全になくする(0%にする)のは難しいようです。(液体窒素を使って、ごく低温にしても、同様に0%にならないことがしばしばあります)
焼入れして硬化する鋼の多くは、焼入れ直後にサブゼロ処理をすると、焼入れ硬さが上昇しますし、残留オーステナイトの影響による経年変化はかなり軽減されます。
しかし、サブゼロを焼入れ直後に行わないで、いったん焼戻ししてから行うと、これらの効果は極端に減少します。
しばしば、サブゼロ処理を焼入れ直後に行うと、焼割れが発生する危険性から、150℃以下程度の温度で焼戻しをしてからサブゼロ処理を行うこともありますが、サブゼロする効果の程度は低下します。
PRクライオ処理
クライオ装置の例(写真:第一鋼業)
クライオ処理の多くは、液体窒素ガスを用いて-180℃程度までの低温に冷却する場合が多いようです。
熱処理以外の分野では液化アルゴンガスなどを用いた処理も行われますが、熱処理ではアルゴンガスは処理費用が高価になるために、液化窒素による冷却以外はほとんど行われていません。
クライオ処理は、焼入れ過程で継続して温度を下げる方法以外に、焼戻し後で製品が仕上がってから処理を行うことを指示されている場合があります。
このような、仕上がった製品に深冷処理を行うと、-75℃のサブゼロ処理では見られない「寿命が改善する」効果がある・・・とPRされていることがありますが、その状況や理由などは詳しくはわかっていないというのが実情です。(参照→クライオ処理[K37])
PR(来歴)R1.8 見直し R2.4 CSS変更 最終確認R6.1月