細粒鋼 (さいりゅうこう)[s02]
オーステナイト結晶粒度が5以上(例えば8など)のものを細粒鋼といいます。この反対語は「粗粒鋼(そりゅうこう)」です。
今日の鋼の製造品質は非常に向上しているので、通常の工程で製造された鋼製品の結晶粒度が粗粒であるということはありませんが、ただ、工具鋼などでは、結晶粒度が小さいほうが強度などの面で優れていることもあって、「粒度番号5」で細粒という評価では不満足と考える人もいるなどもあリます。 粒度見本の例(実際の大きさと異なります)
工具鋼など高品質を要求される鋼では、一般的に、結晶粒が小さいほうが良いとされていることもあって、焼入れ後のオーステナイト結晶粒度が7以上が望ましいとされていますが、熱処理では、結晶粒の増大は避けられませんが、必要以上に焼入れ温度を高くしないことが重要です。
しかし、そうは言っても、品物が大きいと、高温での保持時間が長くなることで、結晶粒が増大するのは完全には避けられません。
結晶粒が細かいほど高性能な鋼とされることもあって、工具鋼メーカーでも、鍛造と焼なまし工程を厳密に管理することで、細粒で高品質の鋼を供給しているのですが、メーカーから出荷された後の工程、例えば、再鍛造する場合や熱処理時(焼入れ時)をする場合の温度管理が悪ければ、結晶粒が粗大化して、機械的性質が劣化するので、注意しなければなりません。
熱処理で結晶粒の増大は、焼入れ温度を高くしすぎることで生じケースが最も大きいので、焼入れ温度の管理は重要です。
熱処理では「焼なまし」をすることで結晶粒の大きさが改善されると書かれている書物もあります。
しかしそれは、焼なましをする時に、変態温度付近で亜結晶粒界から新しい細粒の結晶が生まれることで、そのような表現があるのですが、一度大きくなってしまった結晶は小さくなるのではありません。もとの大きな結晶の間に小さな結晶ができて、それが混粒となって、見かけの大きさが小さく見えるようになっただけですので、根本的には改善したことにはなりません。
PRまた、焼入れにおいて、しばしば、高い硬さを得るために、高めの温度で焼入れすることで対応する方法が取られることがあります。しかしこれも同様に、硬さが確保されたとしても、衝撃値などが低下するので、その考え方の全部が正しいとは言えません。つまり、結晶粒が粗大化することの弊害のほうが大きい場合もあるので注意が必要です。
結晶粒の大きさは、オーステナイト結晶粒度の検査をするのですが、焼戻しをしてしまうと結晶粒界が見えにくくなるものが多いために、通常は焼入れの状態で検査をする必要があります。そのこともあって、製品を検査しても、結晶粒の状況を把握しにくいということも多いのです。
焼き入れたままの鋼の顕微鏡観察では、腐食がされにくいので、王水などの強酸を使って腐食します。
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