流動槽熱処理(りゅうどうそうねつしょり)[r01]
セラミック微粉などを入れた槽の底部から熱した気体を流して、それを浮遊流動させた中に品物を入れて加熱する熱処理方法です。
これは、流動床、流動粒子炉、流動槽炉などとも呼ばれます。
しばしば、プラスチックなどの軽量品の着色やコーティングなどで使用されていますが、現状では、鉄鋼の熱処理での使用例は少ないようです。
かつては600℃程度以下の表面処理用などで、この流動槽が開発されました。しかし、鉄鋼製品用の流動槽炉は、温度分布がそんなに良くないことや、流動ガスのコストがかかることなどもあって、鉄鋼の熱処理用途では使われなくなっていきました。
このような、槽(ポットなど)を用いる熱処理としては、古くは、「鉛浴」を用いて行われていました。
しかし、高温になると、鉛蒸気が飛散するために、鉛害の危険性があり、それを避けるために、「鉛浴」は、中性ソルトを用いる「ソルトバス」に変わってきた・・・という歴史があります。
PRしかし、そのソルトバスにも欠点があって、(1)熱処理後に品物を洗浄する必要性があること (2)品物にソルト液が残留してさびや穴詰まりの原因になること・・・などの問題があるために、これらを改善しようと流動槽炉による代替が考えられましたのですが、鉄鋼の熱処理用としては普及しませんでした。
その理由は、先にも触れたように、鉄鋼製品は重量があるため、うまく品物が流動しにくく、傷などが発生するリスクとともに、温度分布を確保することができないことや、不活性ガスを使用するためにコストがかかること、槽から取り出して、例えば焼入れ冷却する際に、空気に触れて脱炭しやすいこと・・・などで、結局、鉄鋼の熱処理に使用されている例は近年はほとんど見なくなりました。
槽(ポット)を用いる熱処理で、特徴的な恒温熱処理などの特殊な熱処理はソルトバスの得意分野ですが、それに変わる、ランニングコストが少なくてクリーンな熱処理装置が望まれていたのですが、その後も、鉄鋼用の流動槽炉に関する新しいニュースも見られない状況なので、開発も滞っているのでしょう。
そして現状では、ソルトバス自体も、消えゆく運命にありますので、ソルトバスを用いて行われる、マルクエンチ・オーステンパーなどの「恒温熱処理法」も、熱処理の教科書から消えていくことになるかもしれません。
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