熱処理用語の解説

マトリックス      [m02]

matrix マトリクス・素地などと言われます。

高合金鋼などでは、共晶炭化物を除いた組織部分を表現するときにしばしばこの表現が用いられます。

以下は少し専門的な内容ですので、読み流す程度でいいでしょう。

鋼材の特性を検討する場合に、例えば、炭化物を有する工具鋼などのじん性や耐摩耗性を検討する場合などでは、炭化物と素地部分を分けて成分構成を考える場合がしばしばあります。

鋼材の化学成分は、レードル分析値を用いられるのが基本です。

これは、製鋼時に、鋳型に鋳込む前の溶湯から採取した鋼の成分で示されますが、厳密に言えば、溶湯を鋳型などに鋳込んでインゴットになったときには、インゴットの中心部と表層部など、各部で成分が異なっています。

それがその後の圧延や鍛造によって、かなり均質化されて市販される鋼材になるのですが、それを機械加工して熱処理するときに、共晶炭化物(熱処理温度では鋼中に溶け込まない炭化物)などを構成する元素の割合などが異なっているために、熱処理後には、部分的に状態が変わっているのが通例です。

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このように、鋼材全体の成分だけでなく、共晶炭化物を除いた部分について焼入れ状態などを考える必要があるのですが、そのために、それをマトリックスという言い方で区別して鋼材の機械的性質などが検討されます。

現在では、微小部分の成分などの分析が比較的簡単にできるようになり、それが特徴ある鋼種を生み出す結果になっています。

近年、マトリクスハイス(セミハイスとも称されます)という、高じん性タイプの高速度工具鋼が数多く製造されて販売されていますが、これらは、マトリックスの強さを高める成分構成を検討して生まれてきたものです。

これらの鋼種は共晶炭化物の量や形状などを考慮して、素地の強度やじん性を高めるように設計される、ダイス鋼以上にモリブデンやコバルトなどを加えて高速度鋼に類する成分の鋼種になっています。


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(来歴)R2.1 見直し  R2.4 CSS変更   最終確認R6.1月

用語の索引

あ行 あいうえお
か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ

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