第一鋼業株式会社~熱処理用語

硬化層 (こうかそう)  [k48]

焼入れなどで硬化した部分を硬化層といいます。

焼入れによる硬化層は「焼入れ硬化層」といい、浸炭によるものは「浸炭層」、窒化によるものは「窒化層」といっています。

浸炭した品物は焼入れしないと硬化しませんし、焼入れについても、表面と内部の硬さの違いがあるなど、厳密な意味では無いので気をつけておくのがいいかもしれません。


厳密ではないという点で、ここからは、しばしば問題になる、表面熱処理(高周波焼入れなど)の硬化深さに関する不具合例をみてみます。

JIS G 0559には、表面焼入れに関する硬化層の測定方法などが示されていますが、しばしば高周波焼入れをしたものを仕上げ研磨をすると硬さが出ていない・・・などの不具合があることを聞きます。

ここでは、「硬化部分」についての理解を深めるために、それについて簡単な説明をします。

熱処理の硬さ検査は表面硬さ以外はほとんど検査をすることはありません。

一般熱処理でも表面熱処理でもそれは同様ですが、その他の検査は費用がかかるので、一般的には、熱処理後の硬さ検査のほとんどが「表面硬さ」を検査しているだけということをまず知っておいてください。

そして、一般の品物は、熱処理後に表面を研磨などで加工して製品になります。

このときは、空気焼入れ鋼などの焼入れ性のいい鋼種を除いて、多くの鋼種の場合は内部に行くほど硬さが低下する傾向になっています。

そのこともあって、高周波焼入れや浸炭焼入れなどの表面熱処理のJISの考え方では、「有効硬化深さ」「全硬化層深さ」「最小表面硬さ」「有効硬化層の限界硬さ」が規定されています。

  

これらは理解しにくいもので、一回聞いただけではわかりにくいかもしれません。

この最後の「有効硬化層の限界硬さ」は「表面硬さx0.8」ということになっている・・・ということなのですが、このことで問題が起きやすいのです。これらについて説明します。

例えば、焼入焼戻し後に、60HRCの硬さがほしい・・・といっても、JISの定義では60x0.8=48HRC の有効硬化層の硬さとなります。

表面が60HRC以上であっても、指定した硬化層深さがあると言っても、その深さでの硬さは48HRC以上であることしか保証されていません。

その内部で60HRC以上を保証することができないのかもしれませんし、ともかく、このあたりで加工者依頼者双方の問題が出そうなことに注意しないといけません。

一般に高周波焼入れ(熱処理)を依頼する場合は「有効深さ」「硬さ」を指定する場合がほとんどなので、この場合は、「有効硬化深さ」「最小表面硬さ」を要求するということになります。

しかし、JISの規定では、「表面硬さは60HRC以上、硬化深さは2mmほしい」と要求しても、2mmの位置では60HRCは保証されていない・・・ということになっています。

これらのJISの文言はよく理解しないといけない部分なのですが、また一方では、「2mm深さ位置では60HRCを得るのが難しい」という意味が込められているのです。

ここでは用語の説明が主体なので詳しい説明はできませんが、熱処理的にも(装置の特性からも)2mmの深さ位置で60HRC硬さを保証することは非常に難しいことで、その位置での硬さがどうなっているのかを知りたいのなら、JISでは、「硬さ推移曲線によって測定する」・・・というように逃げてしまっています。

つまり、切断して測定しなければ、普通の熱処理後の検査では、「どうなっているのかわかりません。しかし、表面硬さの8割程度の硬さと考えておいてくださいね・・・」ということなのです。

高周波焼入れでは、焼入れ周波数や鋼種から、表面からの深さの状況がある程度わかりますので、仕上げシロを少なくしたり、焼入れ方法を工夫するなどで、熱処理後に表面を加工したあとの表面硬さを確保する方法を考えないといけないということになります。

断面の硬さを検査するのは費用が掛かリます。そのために、一般的には、「経験や技術標準やリピート品などの実例からから考えて、要求以上の深さで硬化するように、深めに硬さを入れて熱処理する・・・などで対応しています。

これによって、ほとんど問題は出ていませんが、このことは、表面硬さ60±2と規定して、表面硬さがそれに合格していても、「鋼材の状態などで、2mm研磨した位置の表面硬さを保証するのは簡単ではない・・・」ということになります。

特に表面焼入れ(浸炭焼入れ、高周波焼入れ)の場合には、このことを知っておいてほしいと思います。

熱処理業者からは、「安い価格で熱処理をしているのだし、お客さんの要求に沿うのは本質的に『無理』なのに、勝手なことを要求してくる・・・」という恨み節も聞こえてきそうな難しい内容でもありますし、注文する側からみれば、「そんないい加減なことしかわからないのか・・・」ということになりますが、これは、鋼材の成分などもあってどうにもできないことのようです。

硬化深さ(→こちら)の記事も参考にしてください。


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