吸収エネルギー(きゅうしゅう~)[k24]
シャルピー衝撃値などのように、試験片を破断するときに費やされた力をあらわす数字です。シャルピー値の単位は、kg・m/cm です。
これが大きいと耐衝撃性が高いと評価します。
「耐衝撃性が高い=強靭性(じん性)が大きい」といえます。
JISでは衝撃値を求める試験方法として、シャルピー、アイゾット試験などが規定されていますが、これらは「破壊靭性」ともいわれ、試験片を破断するときに失われたエネルギーを測定しており、破断し難ければじん性が高いということになります。
熱処理試験ではシャルピー衝撃試験で評価する場合が多いようです。
構造用鋼では3号試験片での試験が多く、通常は常温(20℃±15℃:JIS Z 8703)での試験値を用いますが、ほとんどの鋼は 低温脆性の影響 があるので、低い温度で試験しない・・・という暗黙知があるようです。
高い硬さの衝撃値試験になると、熱処理条件の影響だけでなく、試験片の加工精度などの影響もあって試験値がばらつきやすく、その評価も難しいので、数本の試験をした平均値などで評価することが多いのですが、それでも衝撃試験の問題点はたくさんあります。
もっとも、やわらかい「構造用鋼」の試験でもばらつきが大きいので、数本の試験片を用いることが多いようです。
PR【10Rシャルピー値】
工具鋼などでは、高い硬さの状態の衝撃値を知るためにもシャルピー衝撃試験が行われますが、JIS3号試験片のような2mmUノッチ(にみりゆーのっち)の試験片を用いると、値が非常に小さくなり、ばらつきが大きくなるので、現在は、プロテリアル(旧:日立金属)が古くから行っていたノッチ形状が使われます。(JISの規定はありません)これは高硬さの工具鋼などの試験に用いる10Rシャルピー試験片で、プロテリアル(旧:日立金属)の指導を受けて同社の試験データなどと比較試験をする場合のために、古くから使っているものです。
これによると、2mmUノッチのものより、約4倍程度のシャルピー値になるので、数字が大きいので、他鋼種との比較がしやすくなりますし、測定値のばらつきが少ないという利点があります。
しかし、JISなどとの試験片形状が異なるので、互換性や換算による評価はできませんし、いずれの方法でも、高硬度材については、加工を含めた試験費用も高価になるのですが、他の特殊鋼メーカーも比較しやすいこの試験形状による試験が増えているようです。
これを用いるとうまくいくか・・・というと、そうではありません。
高い硬さの試験(例えば55-60HRCなど)では非常に結果がばらつきます。本来は、高硬度の衝撃試験自体が難しい試験であるといえます。
そのために、プロテリアル(旧:日立金属)では、58HRCを超えるものはシャルピー値が小さくなる上に結果の信頼性も低くなるので、シャルピー試験に変えて、抗折試験をつかってじん性の評価をされている場合も多いようです。
この抗折試験もやはり特殊ですので、独自の試験片形状で試験が行われています。
プロテリアル(旧:日立金属)ではφ5x支点間50の試験片を用いられるものが多く、抗折力と曲がり(たわみ)の積を「吸収エネルギー」としてじん性の大きさを評価されています。
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