熱処理で目にする硬さ推移を示す図 [k16]
熱処理品の硬さは均一でない場合が普通で、その変化の状態を見るために、硬化層の表面から内部の硬さの変化を示す場合に、それを示したものを「硬さ推移曲線」といいます。
よく見る図では、ジョミニ焼入れ性試験の結果を示す図があります。
ジョミニー焼入れ性試験の結果例
これは、ジョミニー曲線やジョミニー焼入れ曲線、焼入れ曲線などとも呼ばれますが、焼入面の円筒先端の硬さを起点として、端面から円筒面の硬さを沿って鋼の硬さ推移から焼入れ性(硬化の程度)を表したものです。
上のデータは、焼戻しによる硬さ定価の状態を表す便利なものです。
その他の硬さ推移を表すものには、下左の「Uカーブ(ゆうかーぶ)」や、断面における硬さ推移を示す図があります。
通常の品物で内部硬さの傾向を見たい場合には、切断面の硬さを測定します。


上左が「Uカーブ」の例で、構造用鋼(S45C)を水焼入れした時の断面硬さ(HRCで測定)の例です。
丸棒の表面から中心に向かって硬さが低下している様子から「U曲線(Uカーブ)」と呼ばれています。
上右図は処理条件を変えて窒化したときの、表面から内部に向かって測定した断面硬さをマイクロビッカース硬さ計を用いて測定している一例です。
これらが硬さ推移曲線の例ですが、硬さ推移を見ることで、焼入深さ、表面処理層の状態などが把握できます。
下のグラフは、ジョミニー焼入れ試験の硬さ範囲を示したもので、「焼入れ性が保証された鋼材」に付属する図ですが、この鋼材はJISでは「H鋼」と呼ぶことで、この2つのジョミニ試験結果の範囲を示す図は「Hカーブ(またはH曲線)と呼ばれます。
このHカーブも、ジョミニー焼入れ性試験による方法と同じ方法で、25丸の丸棒の先端を水冷して焼入れしたのち、端部から外周部をロックウェル硬さ計で測定してその硬さ範囲を定めているものですから、断面の硬さではありませんので注意が必要です。

Hカーブの例
(来歴)H30.12 見直し R2.4CSS変更 R7.8月見直し