熱処理用語の解説

硬さ換算表(かたさかんさんひょう)[k14]

硬さ試験機による相互の硬さを換算するための数表を「硬さ換算表」といいます。

JISには硬さ換算について規定されていませんが、SAE-J-417によるものがJISハンドブック巻末などに掲載されています。

ここには、ロックウェル・ビッカース・ブリネル・ショアーの相互硬さの換算値に加えて、引張試験値(引張強さとの換算値)が掲載されています。

JISハンドブックの巻末には、ビッカース硬さ、ブリネル硬さ、ロックウェル硬さを基準にしたSAE-J-417の硬さ換算表が掲載されていますが、詳しくみると、微妙に数値が異なっているのが気になります。

また、SAEのものとは違う、いろいろな換算表が使用されており、絶対的なものではないのですが、これらは非常に便利なものです。

この換算表には、さらに、引張強さの近似値が加えられて掲載されています。これは、「硬さ=強さ」ということがいえるためで、これも便利です。

昭和年代には、熱処理試験として、機械試験(引張試験など)がしばしば行われていましたが、最近では、硬さ検査をすることで引張試験値を推定するということで試験を簡略化されることも多くなっています。

引張試験をする際には、試験片の硬さを測るのが慣例的に行われていますが、この硬さと引張り強さは、換算表に非常によくあっています。(もちろん、表面と内部の硬さが異なったり、材料欠陥がある場合などは合致しませんが・・・)

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このSAEの換算表には、基準の硬さに対する換算値として3表が掲載されていますが、それぞれをよく見ると、表ごとに若干数値が違っていることに気づくかもしれません。

特にショアーについての数値が微妙に違っていますが、ショアーについても、近年は硬さのトレーサビリティーが取れるようになったことで、もう少し厳密にしてもいい感じですが、何しろ、外国の規格ですので、どうしようもできません。

もちろんこれは、「これらはあくまで換算値であり、便宜的なもの」と割り切って使用するというものなので、厳密で絶対的なものではないと考えておくのが、これを使用する前提にあるということを頭に入れておいてください。

日本でもそうですが、米国においては 「硬さ」は古くから商取引に欠かせないものであったこともあって、これらの換算表が作られて慣用的に使われてきた歴史があるのですが、JISの考え方にそぐわないところがあったのでJIS規格として制定されなかったようです。

日本でも、古くから、工業技術院の硬さ研究会などで、地道に硬さ換算や硬さの研究が行われてきており、それらが作成した換算表もあって、概ねSAEのものと合致していたこともあるのですが、改めてそれをJISとして規定しにくいということもあって、SAEの内容がそのまま掲載されているのでしょう。

「硬さは、指定された試験機で測定する」というのは基本です。しかし例えば、ロックウェル用の硬さ試験片をショアー硬さ試験機で測定したものを換算表を用いて換算すると、実用上差支えない程度にうまく適合していることがわかります。

このことから、JISの標準を作成してもに問題は起きないと思うのですが、JISのISO化などもあるので、そこまでして、いまさら規格化されることはないという感じで、今後もJISとしては制定されることはないと思っています。

私の勤務していた第一鋼業(株)では、ロックウェルとショアーの換算が常用されることもあって、古くから、ロックウェルとショアー硬さ値を0.5毎に丸めたものを独自に作成して使用していした。

これを基にした使いやすい換算表を作っており、それを40年以上にわたって使用していますが、これによる顧客とのトラブルは起こっていませんし、近年は、JISに規定されていないところまで、ISOによる製品保証の考え方が定着しているため、硬さや硬さ換算におけるトラブルや苦情は非常に起こりにくい状態で管理されていると考えていいでしょう。
その硬さ換算表などはこちらから参照いただけます

換算表は常時成り立っているのではありません。どういう場合にでも換算ができるというものではないことについても留意しておきましょう。

例えば、換算表には、通常、適用するときの以下の注意点などが書かれています。

①換算表は幅広い鋼種の近似的なものであるということ  ②オーステナイト系ステンレスや冷間加工したものは不可  ③滑らかな表面であること  ④表面焼入れ品などは不可で、十分な厚さがあること  などですが、「こういう注意点がある・・・」ということを頭においておくといいでしょう。


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や行 やゆよ
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