拡散(かくさん) [k06]
分子が熱によって移動する現象を拡散といいます。
分子の拡散によって、析出、再結晶、浸炭などの熱処理が進行します。
熱処理ではこの言葉は非常に大切なのですが、わかりやすいように説明されることは少ない項目です。
ここでは専門的に説明するのは避けて説明しますがが、例えば、色の違う液体を混ぜると時間とともに混ざり合って、均一になっていきます。また、そこに熱が加わると、その進行が速くなるなどもありますし、時間とともに、その均一化が末端まで進行していきます。それが拡散現象です。
熱処理で代表的な拡散を利用したものは「拡散焼なまし」と呼ばれるもので、高温で鋼を保持して成分的な均質化を図る方法があります。
これは製鋼の際に溶湯を凝固させて鋼塊になったものを、再度加熱して、オーステナイト温度の高温領域に温度を保持して、不均一になっている組織の状態を均一化することで、これは、拡散現象を利用して行われる高品質化の方法です。
また、雰囲気の元素濃度の違いを利用する「浸炭」や「窒化」では、雰囲気中の元素が鋼中に進入し、母材と反応しながら表面から内部に向かって濃度が低くなっていきます。これらも「拡散」という現象です。
浸炭では「炭素」を、窒化では「チッソ」を鋼中に侵入させる熱処理法ですが、温度と濃度を制御して、それらの元素を、濃度の高いほうから低いほうに移動させる処理も拡散という現象を利用しています。
この時に、雰囲気の濃度と鋼中の濃度は差が大きいほうがよさそうですが、鋼にそれらを進入させるのはいろいろな反応や条件が加わるので、簡単ではありません。
つまり、鋼の内部へその他の元素を進入させる方法は、成分、温度、濃度などの最適条件を見つけてやる必要があり、また、キャリヤと呼ばれる、水素その他の助けを借りたり、温度変化を加えたり…というように、様々な方法で処理されることになります。・・・
このように、個々にはいろいろな説明する内容があるのですが、ここでは言葉の意味として、「分子が熱によって移動する現象」と考えておいていいでしょう。
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