熱処理における不具合(ふぐあい)について [h23]
熱処理についていえば、不具合は「不良」「不良品」と同義です。
また、熱処理をした結果、何らかの異常があって、それが、外観や検査で、通常のものではないとわかる場合と、外観だけではわからない場合があります。
熱処理加工会社側の取り扱い方でいえば、会社内で発生し発見したものは「不具合」で、いったん品物を出荷してから、顧客からの「クレーム」がついた場合とは別々に対応するように規定することをISOの品質要求が求めています。
そのために、正規の状態にならなかった品物のことを「不具合品(異状品)」、品物の状態は別にして、工程手順や工程の内容が異状な場合を「(工程等の)不具合」としている場合も多いようです。
【不具合と不具合品】
ISOの品質要求では、社内で発見した硬さ不良、変形・変寸などの品質が顧客が要求する仕様と異なる品物は「不具合品」として別に管理することが要求されています。
これは、顧客側に原因で生じた、例えば、異材混入なども不具合品として扱っています。
この、お客様の手違いなどで生じた異材混入によるケースは、毎年、もっとも発生件数の多いもので、再熱処理で製品が生かされる場合は、まだ損失は少ないのですが、これによって、お客様の損失金額がもっとも大きいということを覚えておいて、異材混入をしないように注意する必要があります。
また、工程内の異常なども「不具合」といいます。 これには、検査結果に表れないものなどもあリます。
【クレーム品】
「不具合・不具合品」は、出荷する前までの異常ですが、出荷後に問題や品質不良が露見した場合は、クレーム品として、不具合、不具合品とは別に、その処置や対策をすることが社内の規定で定められています。
【工程の不具合】
熱処理における、計画した状態以外の工程や品質になるものすべてが「不具合」として扱われます。
不具合には熱処理工程や仕組みの中で生じる「工程の不具合」と、その結果を含めて、検査工程などで発見された「品物の不具合」があり、それらは、通常の工程とは別にして、是正再発防止対策がとられます。
不具合等の異状の場合の処置や再発防止について、多くの工場では、ISO9001に基づく社内規格を定めて運用されており、クレーム(クレーム品)の場合でも、社内的な処置がとれる場合は、品物や工程などで再発防止の処置をとることが求められています。
熱処理をして、後日に不具合が露見する場合もあり、ISOの認証工場などでは、定めのない熱処理文書類の保管期限は3年など・・・としており、その期間内であれば何らかの対応が取れる仕組みになっています。
余談ですが…
私が熱処理に従事しているときに、年間の不具合で、最も件数が多く、損失の大きかったものは「異材混入」でした。(多分、現状も変わらないでしょう)
これは、お客様が言う材質ではなく、例えば、SKD11だといって持ってこられた品物が、実際はS45Cであったというようなケースで、鋼種を間違って持ってこられて、それを熱処理してから、材質が違うことが判明するのですが、熱処理してしまうと、品物がオシャカになることもあります。
もちろん、熱処理前に異常に気付く場合もありますが、ほとんどは、熱処理後の表面肌の違いや、硬さ検査での「硬さ異常」で、それが判明します。
そうなると、鋼種を間違えて持ってこられたお客さまの責任になるのですが、日ごろのお付き合いもあって、熱処理費用を請求にくいなどで、双方に損失が生じます。
材料の取り違えは起こりそうなことに思えませんが、実際には多発しています。 この「異材混入問題」対策は常に頭に入れて警戒しておくといいでしょう。
(来歴)H30.11 文章見直し R1.11 見直し R2.4 CSS変更 R7.8月見直し