異材混入(いざいこんにゅう) [a09]
ロット(加工に供される品物の集まり)内に異種の材料が紛れ込むことを「異材混入」といいます。
これは、熱処理に関してだけのものでなく、鋼材の製造段階、流通段階、そして、納入された後の保管や加工の段階で発生すると製品にならないなどの大きな問題に発展するので、常に注意しなければいけないことです。
熱処理する鋼材においては、異材が混入すると、目的の品質にならないので、大きな問題に発展しますので、熱処理工程においては、最も注意すべきことが、この「異材混入」です。
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指定の鋼種以外のものが混じったまま、同時に熱処理してしまうと、ロットとして所定の品質が確保されないことになるため不具合になりますが、発見されないまま工程が進むと大変なことになります。
「異材」の意味は広範囲ですが、熱処理においては、熱処理工程での「予想しない成分の鋼種」をさします。
熱処理業における不具合で最も多いのが、この異材混入による不具合です。
そしてほとんどは品物を持ち込まれたお客様側に起因するものです。
つまり、お客様が持ち込まれた時点で別鋼種が混ざり込んでおり、それは、熱処理前に発覚することは少なく、熱処理中または熱処理検査でそれが発覚する場合がほとんどです。
通常は、熱処理依頼の際は、ほとんど、注文書の材質、硬さ、熱処理の種類を確認すると、熱処理作業に入りますので、加熱前に発見することはほとんどありません。
そして、熱処理をしたあとの硬さ検査の段階や出荷確認で「材料がおかしい」ということが発覚します。
一旦熱処理をしてしまうと、品物にならないことにもなって、大きな損失が発生するので、注意しないといけないのですが、その対策は徹底した材料管理すること以外に方法はありません。
間違って熱処理したものは、もとに戻せない
違った材料として熱処理した品物は、再熱処理をする場合もあります。
しかし、焼入れ温度が違う処理をしてしまった場合などは、同じ硬さに仕上がったとしても、じん性や寸法変化などで品質は劣化してしまっていますので、重要部品は1から作り直す必要があります。
この予防法としては、きっちりとした品物の分別管理を徹底することと、常に気を配っていること以外に方法はありません。
工程中の『気づき』が損失防止につながる
注意しておれば、熱処理時だけではなく、機械加工工程中でも、いろいろなサイン(兆候)に気づけば、防止できることもあります。
例えば、素材段階では、サビのツキ具合、鋼材の分別塗装の色で、機械加工中では、熟練した加工者は、微妙にキリコ(削り屑)の色や形が異なっていたり、仕上がった肌の違いなどにも気づきます。
人間の五感は非常に高度なもので、それを駆使して異常に気づく場合も多いですし、もしも何らかの感じで、事前に異材混入の可能性に気づけば、熱処理屋さんでは、ほとんど無料で、熱処理前の火花試験(検査)や蛍光X線分析で判別(分別)してもらえることも多いでしょうから、事前の相談することだけで大きな費用の損失が防げます。
「気づき」によって大切な品物が助かるケースが多いことを知っておきましょう。
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