比摩耗量 (ひまもうりょう) [h17]
摩耗試験での条件を合わせて、鋼材同士を比較するために用いる指標のひとつです。単位を持たない比較のための数字とするために「比摩耗量」としていますが、「摩耗量」として考えても良く、この数値が大きいと、耐摩耗性が低いと評価されます。
通常は、相手材、摩擦速度、負荷荷重、摩擦距離などを固定して比較することで耐摩耗性の比較に用います。
摩耗量(摩耗減量)を試験しようとすると、摩擦条件を少し変えるだけでそれが大きく変わるのが通例であり、そのため、いろいろなファクターのうち、1つのファクターの値だけを変えてその変化量をを調べる方法がとられるのが一般的です。
工具鋼の摩耗のしにくさを調べる試験には、製鋼メーカーでは、「大越式迅速摩耗試験機」という試験機を用いた試験結果がよく掲載されています。
試験例(プロテリアル(旧:日立金属))
この試験は、摩耗程度を知りたい試験片(熱処理した板状の試験片:この図ではSLD)に、軟鋼(この例では、SCM415)などで作った回転する試験片を押し付けて、それを一定時間摩擦させたときの摩耗減量(体積)を測定して耐摩耗性の大きさを評価するもので、この試験機では、その他の条件を同じにして「摩擦速度」だけを変えて試験をして、各速度における摩耗減量を比較します。
これによって、鋼種ごとの摩擦速度を変えたときの耐摩耗性が得られるので、別に他の材質で試験すると、両者の耐摩耗性が比較ができることになります。
この数値はディメンジョン(次元)を持っていますが、他の条件が同じなので、単位をつけない比較数字として用いることができるので、このため、この数値を「比摩耗量」というように言われます。
PRどのような試験でも、長短所がありますが、この摩耗試験では、試験をすると、ともかく摩耗量の数字が出るものの、高速度と低速度では発熱の影響や摩耗粉の影響などで摩耗の形態が変わってしまったり、摩耗痕の測定の仕方で数値のばらつきも多いので、同じ条件で試験したといっても、その評価には注意が必要です。
そういう問題はあっても、簡単で短時間で試験ができることから、各特殊鋼メーカーが採用しているのかもしれません。
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(来歴)H30.11見直し R1.10グラフ追加 R2.4 CSS変更 最終確認R6.1月