大越式試験機(おおごししき~) [a24]
これは、摩耗試験用の「大越式迅速摩耗試験機」のことをいいます。
この試験機は、荷重、摩擦速度などの条件を簡単に変えて試験が行えることもあって、工具鋼の耐摩耗性評価で用いられることが多い試験機です。
試験方法は、回転する円盤を試験片の板に押し当てて、そのくぼみの大きさから摩耗減量を算出して比摩耗量を測定するもので、摩擦速度(円盤周速)や荷重、摩擦距離などを変えて数分間で試験できることから、焼入れした工具鋼の摩耗特性を比較的簡単に調べることができます。
とくに、摩擦条件を変えた特性を比較的簡単でスピーディーに結果が出ることで、焼入れ硬化した工具鋼の摩耗を調べる場合に利用されることが多い試験機です。
・・・とはいうものの、実際に試験をしてみると、顕微鏡で拡大して摩耗減量の測定をすることも大変ですし、同条件で試験しても、毎回、結果が大きくばらつくことが多いために、その摩耗量評価は簡単ではありません。
しかし、その他の摩耗試験でも、いろいろな長短所があるので、どの試験方法がいいのかが決めにくいのですが、この試験機では、短時間に負荷荷重や摩擦速度を替えて簡単に試験ができる利点があって、プロテリアル(旧:日立金属)などの工具鋼メーカーが特性試験に用いられることも多いことから、それに沿って利用されることが多いのかもしれません。
そのために、多くの工具鋼メーカー各社のカタログなどにも、これを使った試験値がたくさん見受けられます。
しかし、注意する点は、各社が同じ条件で試験をしているということはありませんので、単純に他社の試験数値だけを比較することはできません。各社ごとの比較データは、各社の基準で試験しているので、それは問題ありません。
例えば、各社における荷重、摩擦速度、摩擦距離などが同一条件になっていない場合がほとんどですので、同一条件で比較しているのかどうかを注意しておく必要があります。
また、この試験機では、試験中に摩擦熱が発生したり摩耗粉が凝着することで、摩耗の状態が変わりやすいので、たとえ、条件を合わして試験をしても、結果が大きく変わることはしばしばあります。
試験条件を決めることも大変なのですが、こればかりは、たくさんの試験を経験しないと決めにくいかもしれません。
PR私は、大阪府産業技術研究所の試験機をお借りして、自社の鋼材などを比較試験をすることが多かったのですが、通常用いる試験片サイズは5tx20x50程度で、回転円盤はφ30x3w程度のS33Cの焼ならし材などを使用して、1.5m/s以下の比較的低速の摩擦速度で耐摩耗性を比較する場合を基準にして比較試験をするようにしていました。
これは、プロテリアル(旧:日立金属)の材料を多く使用していたので、プロテリアル(旧:日立金属)の基準に沿って試験をしたのですが、もちろん、プロテリアル(旧:日立金属)の試験値とは一致しませんので、独自に評価をすることになります。
特に、鋼種比較をする場合は、摩擦速度が遅いと摩耗量の差が出ませんし、高くなると熱の影響が強くなるので、適当なところを選んで評価しなければなリませんが、この試験機では、試験条件の変更が簡単ですし、回転円盤を毎回取り替えて試験をすると、同じ試験片に多数の摩擦痕を付けて条件を変えた場合の比較が簡単にできるために、多数試験を1度にすることができることもあって、便利な試験機です。
たしかに便利で簡便な摩耗試験方法ですが、あまり的確な性能評価には向いていない感じもしますが、しかし、実情では、迅速で確実な試験ができる大越式摩耗試験機に変わるものがないために、多くの材料メーカーが多用している・・・ということかもしれません。
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