熱処理用語の解説

ひずみ取り(ひずみとり)  [h14]

矯正、曲がり除去のことをいいます。
冷間で加圧して行うプレス矯正やロール矯正などの方法のほかに加熱しながら行うなどの、様々な方法があります。(→こちらにも同様の関連記事)

歪取りとは、熱処理における熱および変態で生じた変形を修正する操作で、冷間で機械的に外力や変形を加える場合や、熱を併用して、温度を加えて行なう方法があります。

ひずみ取りの方法でもっとも一般的なものは、冷間でプレスで押さえる「プレス矯正」や、単ロールや多段ロールを用いる「ロール矯正」などがあります。

熱処理におけるそのほかの方法では、焼入れ途中のマルテンサイト変態がおこらない温間温度で、プレスや金型などを用いて拘束する方法(プレスクエンチといいます)や、焼戻し時の組織変化を利用して外力を加える方法(プレステンパーといいます)などが行われています。

熱処理ひずみ(曲り)は内部の応力によって生じるものですので、それを修正(変形)させると、応力を変化させることになります。そのため、その後に削り加工などの機械加工などを行うと応力バランスの変化から、予期しない新たな変形が生じる場合もあります。

このため、精密部品などでは、ひずみ取り後に硬さなどを低下させないようにした「焼戻し(応力除去のための加熱)」を行う場合もあリます。

これについても、もちろん、偏応力が内在しておれば、温度を上げることで加熱中にひずみ(曲り)が発生することもあります。その場合には、その発生の程度を見て、矯正+焼なましを繰り返す場合もあります。

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応力除去の加熱と歪取り

ここで、応力除去のための加熱や歪取りについて、混同しやすいのですこし説明します。

構造用鋼の棒鋼などでは、ロール矯正などのあとには、特にそれで生じた応力除去の熱処理は行いませんが、焼ならし・完全焼なまし品では、必要に応じて、650-750℃程度の応力除去焼なまし(低温焼なまし)を行う場合があります。

これは、矯正時の応力がその後の加工で変形などの影響を受けにくくするためで、加工時の変形を少なくするために、顧客の要望で、歪取りをしない場合もあります。

また、調質品を矯正して、その応力除去が必要な場合は、焼戻し温度以上の高温で焼戻しすると、硬さが低下するために、焼戻し温度以下で応力除去のための加熱処理(焼戻しと同じ操作)をしますが、当社ではこれを「応力除去テンパー(焼き戻し)」と言っています。(JISの表現では「応力除去焼なまし」になります)

しかしこれは、JISでいう「応力除去焼なまし」とは若干違う意味合いなので、このような呼び方で区別していますが、さらに混同しやすいことですが、応力除去を兼ねて外力を加えながら焼き戻しすることを、しばしば「ひずみ取り焼なまし(焼鈍)」という方がおられます。

これについても、やはり、混同しないように、当社では「プレス焼戻し(テンパー)」という表現をするようにしています。

調質品など、品物の多くは最終の硬さが重要ですので、いずれも、その焼戻し温度以下で加熱して硬さを下げないように応力除去の加熱をします。

これにより、シャフト類の加工中のフレや変形をかなり軽減できます。

歪取りやそれに続く応力除去熱処理は、上のように、わかりにくいところがありますので、熱処理依頼をする場合には、目的や用途を含めて事前に打ち合わせをするのがいいでしょう。


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用語の索引

あ行 あいうえお
か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ

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