押し込み硬さ(おしこみかたさ) [a28]
硬さ値を得るための方法で、硬い圧子を品物に押し込むときの荷重や押し込みにくさで表現した硬さをいいます。
JISには、ブリネル硬さ、ビッカース硬さ、ロックウェル硬さなどが規定されており、反発硬さを測るショアー硬さとともに、トレーサビリティー(国家標準につながる管理体制)があることで、熱処理の硬さ検査に用いられています。

これはロックウェル硬さの例です。
ロックウェル硬さは圧子の種類、荷重などでさまざまな硬さの品物の測定ができるように考えられています。
押し込み硬さの試験値(硬さ値)は、硬い圧子を荷重をかけて品物に押し込んだ時の深さや圧痕の大きさで硬さを数値化しています。
現在は、完全に自動化された試験機もあり、上の試験機は、荷重の加除が自動化されているタイプです。
これは硬さ値を目盛から読み取りますが、表示などがデジタル化されて、データ集計などもできるようになっているなどのものもあって、使いやすくなっています。
PR
試験機相互の硬さ換算は一般的になっている
本来、硬さについては、指定された硬さ試験機を用いて行うのが基本ですが、熱処理後の硬さに対しては不向きな試験機もあるので、測定可能な試験機を用いて測定した硬さ値を、指定された硬さ値に換算して熱処理品の評価をすることが一般的になっています。
JISには硬さ試験機の相互比較についての規定はないので不便であったので、古くからASTM(アメリカの鉄鋼規格)やその他の「硬さ換算表」はすでに一般に広く用いられ、また、その信頼度も高いので、JISのハンドブックの巻末にもASTMの硬さ換算表が掲載されています。
この換算表は、鉄鋼製品のブリネル硬さ、ロックウェルC硬さ、ビッカース硬さ、ショアー硬さの相互換算ができるようになっています。
通常は、押し込み硬さ試験は、調質品などのそんなに硬さが高くない素材熱処理品にはブリネル硬さ試験が、その他の高い硬さの工具や機械部品についてはロックウェル(Cスケール)硬さ試験機を用いることが多いようです。
硬さについての注意点など
JISの硬さ試験機の規格には、硬さの測定方法や試験条件等が示されていますが、実際の熱処理品の硬さの測定では、測定位置が限られたり、形状による誤差が生じるなどの制約があり、指定する試験機でどのような品物でも測定できるわけではありません。
このこともあって、顧客から明らかに適切でないと思われる試験方法を指定された場合などでは、事前の打合せなどなどでの取り決めをしたほうがいいでしょう。
このように、指定された試験が行えない場合は、①他の試験機を用いて指定する硬さに換算する ②試験片などを用いて代替試験をして代用する。 ③硬さ試験をしない。 などで対応することになります。
実際の品物を検査する場合には、表面をグラインダーなどでなめらかに仕上げた面を測定しなければなりませんし、試験時の押し込み跡(圧痕)が残ることで、それらが問題になる場合もあります。
後加工しない部分で硬さ測定すると問題が出ますので、仕上げシロや測定位置などを事前に打ち合わせすることも考えておく必要があります。
しかし、そうはいうものの、硬さ試験における問題などを知って仕様を決めることはかなり専門的なことで、ただ単にJIS規格を理解しているというだけではダメですし、測定経験や熱処理知識がないと難しいかもしれません。
それもあって、ISOやJISの認証を受けた事業所では硬さのトレーサビリティーが確保されているとともに、熱処理や熱処理検査作業が標準化されているので、ほとんどの場合は打ち合わせする必要がないようになっており、これによって、硬さ試験のトラブルはほとんど出ない仕組みが構築されています。
指定された硬さ試験を行うのが難しい場合などでは、代替の試験機を用いて、その試験結果を硬さ換算表を使って換算することが通常行われますが、その場合でも、信頼性が高いやりかたをして、問題が出ないように配慮されているのが通例です。
硬さ試験では、品物の表面硬さを測る以外(例えば、内部硬さや刃先の硬さなど)の測定は難しい上に、測定位置が(品物の重心や中央表面などに)限られることも多いので、硬さ検査(試験)における不明な点や気になる問題があれば、熱処理前に打ち合わせるとよいでしょう。
それぞれの試験機でよく使われている試験条件は、
①ブリネル硬さ試験:10mmの超硬球を3トンの荷重での測定
②ビッカース硬さ試験:ダイヤモンド圧子を30kgの荷重での測定
③ロックウェル硬さ試験:ダイヤモンド圧子を150kgの荷重で測定(Cスケールを用いる測定)
というのが一般的ですので、これ以外の方法や条件で試験したい場合は、事前に打ち合わせるとよいでしょう。
【参考:ショアー硬さ測定風景】
(来歴)H30.11 文章見直し R2.4 CSS変更 確認R7.4月