熱処理用語の解説

 塩浴熱処理(えんよくねつしょり)について [a19]

塩浴(ソルトバス=塩浴炉)を用いて行う熱処理のことをいいます。ソルトバス熱処理などの言い方もあります。

第一鋼業の高温用ソルトバスソルトバス ソルトバスの例(第一鋼業)

塩浴に用いる加熱用の塩浴剤は、塩化ナトリウムや塩化バリウムなどの中性塩の混合塩(ソルト剤)を用いて、それを溶融させた中に品物を入れて加熱します。

言い換えると、ソルト剤を加熱して溶融し、そこに品物を入れて加熱や冷却を行う熱処理が塩浴熱処理・ソルトバス熱処理です。

ここでは第一鋼業(株)の例を紹介しますが、この写真のようにそんなに大きくない設備がおおく、過去には大掛かりな連続処理設備も多くあったのですが、影をひそめてしまっています。

第一鋼業の場合は8基のソルトバスがあり、その加熱は電気、都市ガスなどを用いて160℃~1300℃程度に加熱して使用しています。

塩浴の中に品物を浸漬すると、品物が空気と触れないために、酸化や脱炭のない滑らかな熱処理肌になリます。すなわち、こらは、無酸化熱処理法の一つです。

ただ、欠点もあります。 その一つは、「処理品が錆びやすい」ことです。

ソルト剤は温度が低いと固体で、溶融して液体状態で使用します。

品物に付着したソルト剤には吸湿性のものもあり、熱処理後にネジや隅角部にソルトが残っていると、サビの発生原因になります。

第一鋼業の設備は比較的小さなものですが、この設備の特徴は、品物に応じて温度や処理時間を簡単に変えることができることで、高速度工具鋼の焼入れに広く用いられてきました。

しかし近年では、仕上がりの外観の美しさから、真空炉で処理される傾向にあって、ソルトバスによる処理量は減少しています。

特殊な処理ができて小回りが利くのが長所

その他の特徴としては、塩浴では、オーステンパー、マルクエンチなどの特殊な熱処理(恒温熱処理)ができることがあげられます。

また、その他に、小さな設備で、簡単に温度が変えることができることで、テスト品や熱処理実験(試験)が簡単にできます。

熱処理試験では、正確な温度を簡単に設定できますので、費用や時間的に、通常の炉を用いるよりも優れています。

そのために、老朽化や環境の問題などで維持も大変ですが、簡単に廃棄してしまうには捨てがたい設備です。


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用語の索引

あ行 あいうえお
か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ





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