予熱(よねつ)の重要性について [y17]
変形防止や加熱時の温度均一性を増す目的で、目的の加熱温度以下のある温度に加熱保持することを「予熱する」といいます。
予熱は段階的に加熱することですが、これによって、大きな品物の加熱中の各部の温度差を小さくして変形を予防する効果があります。

この図は、SKD61のφ300x1000の丸棒を大気炉で1030℃に加熱したときの中央の表面と中心温度をコンピュータシミュレーションしたものです。
これによると、加熱中にオーステナイト変態が起こる750~850℃程度の温度域では、100℃程度以上の温度差があることがわかります。
焼入れ温度に達するまでの加熱中は、品物の温度の不均一は熱膨張の差によって変形が起きますし、焼入れのための変態による寸法変化や、冷却時の収縮などで、熱処理過程では、品物各部の温度差は変形に関係深いので、特に大きな品物や異形の品物では、作業工程中は、できるだけ温度差を小さくすることが大切ですので、加熱中の予熱は重要です。
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予熱温度は、変態点や焼入れ温度を考慮して、それ以下の温度にして品物を保持して品物の温度を炉温になじませます。
できれば、なるべく多段階で昇温するのがいいのですが、時間と費用が掛かるので、変態温度前後の温度で予熱されることが多いようです。
予熱をすることで加熱時間が増すために、操業時間が伸びますし、コストもかかります。
ただ、熱処理変形は焼入れなどの冷却時に発生する変形が最も多いので、過剰な予熱は必要ないと主張する人もいます。
私の勤務していた工場では、予熱をする場合でも1段の予熱がほとんどで、温度ムラが生じやすい真空炉やソルトバスでは2~3段の予熱をしていることもありましたし、構造用鋼の素材では予熱なしでした。
また、加熱焼入れ温度によって予熱温度を変えるなど、予熱の回数や保持時間はコストに反映するので、作業ごとに作業方法を指示するようになっていました。
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