熱処理用語の解説のロゴ

焼戻しマルテンサイト     [y11]

焼入れして硬化するのは、マルテンサイトという硬い組織が生成するためですが、このマルテンサイトを250℃程度以下で焼き戻した状態のマルテンサイトを焼戻しのマルテンサイトといいます。

これを焼入れのままのマルテンサイトに対してβマルテンサイトと呼んで区別をする場合もあります。

この焼戻しマルテンサイトは、焼入れしたままのマルテンサイトよりも強靭性で、若干硬さは低下する場合もありますが、十分な硬さであるので、冷間工具などはこの、低温で焼戻しした状態で使用するのが良いとされています。


水焼入れしたままのSK105の小さな資料では、マルテンサイト組織になっていて、3%ナイタール(硝酸アルコール溶液)ではほとんど腐食しないので、王水などでその組織を観察するのですが、200℃程度に焼戻しすると、20秒程度でナイタールを用いて腐食して観察できるようになります。

鋼種全般に言えることは、焼入れしたままの状態と比べて、200℃程度の焼戻しをすることで若干硬さが低下し、じん性が急激に向上すると説明されます。

このために、焼入れのままではなく、この状態で工具などで使用するのが長寿命になる場合が多いとされます。

不二越資料 組織と長さ変化

T字カミソリの刃はかつては炭素工具鋼で作られていましたが、その当時は「熱いお湯につけると長持ちする・・・」というまことしやかなうわさが語り継がれていました。

現在はステンレス鋼に変わり、焼入れの方法も多様化していますし、表面処理などで切れ味を改善していますので、このようなことは当てはまらないと思いますが、通常の焼入れでは、焼戻しをして使用するということでじん性が向上するので、焼戻しはとても重要です。

PR

上は、不二越NACHI-BUSINESS news2004.novの資料で、これによると、100℃で炭化物析出による長さ変化が示されています。

この時にいろいろな変化が起きていると考えると、熱処理の重要性というものが感じ取れると思います。

不二越さんは、熱処理の基本データをたくさん公表されています。「不二越 熱処理講座」で検索して読まれると、参考になるものも多いでしょう。


PR

↑記事のTOPに戻る


(来歴)R1.9 見直し   R2.4 CSS変更   最終確認R6.1月

用語の索引

あ行 あいうえお
か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ

PR






その他の記事

鋼の熱処理について バナーリンク

熱処理ブログ バナーリンク

ソルトバス熱処理 バナーリンク

せん断刃物技術の基礎 バナーリンク

↑記事のTOPに戻る