焼戻しぜい性     [y09]

構造用鋼などを焼戻し後に徐冷すると衝撃値などのじん性が低下する現象があります。

これを焼戻し脆性といいますが、300℃付近の青熱脆性、500℃付近の一次焼戻し脆性、それ以上で生じる高温脆性などがあります。

JISなどでは、それを防止するために、焼戻し後に「急冷」することと熱処理方法を規定しています。
このために、用途によっては、焼戻し加熱後に水冷や油冷をすることで脆化を防ぐ方法をとりますが、温度的には、これらの温度範囲を避けるのがいいかもしれません。



ただ、近年では焼戻し脆性に関する記事や内容を見ることはほとんど見なくなったようです。
これの理由は調べたことがないのですが、特に2000年以降は鋼材の製鋼技術が良くなって、非常に品位が向上していて、脆化原因が低減しているのではないかと思っています。
これらのぜい性について議論されたのは1980年以前の鋼材ですが、それと比べると、不純物や偏析は大幅に改善されていて、焼戻し脆性の原因と考えられていた粒界偏析や硫黄(S)やリン(P)などの元素の影響は、高度に改良されて、今の鋼材に当てはまらない感じがしています。

当社では現在はほとんど構造用鋼を扱っていないのでこれらについての確認や試験はしていませんが、主に扱う工具鋼についても300-500℃の温度範囲の焼戻しはほとんどやっていませんし、500℃以上の焼戻し脆性についても、焼戻し温度ではなく硬さの良否で判断するだけですので、焼戻し脆性ということは何も考えていないという状況です。
もちろん、焼戻しの冷却は空冷ですが、特にそれが原因だという不具合も見当たりません。

また、当社の刃物用材料でSKS4系統の材料があり、材料試験をすると350℃~400℃付近でじん性の低下する鋼種がありました(現在は使用していません)が、この範囲の焼戻し温度を使うことについて社内で問題になったことがありました。
しかし、実体衝撃試験のばらつきを考えると、温度を意識せずに硬さをメインに考えていいだろう・・・ということになり、脆性温度を無視して熱処理していましたが、特にそれが原因の不具合も特定できませんでした。

このようなこともあって、熱処理用語としてはこの言葉はしばしば出てきますが、無視するということではなく、「危うきは近寄らず」で、300-500℃の温度範囲を避けて焼戻しするのが良い・・・ということで記憶しておく程度でいいと考えています。
異論があれば指摘していただくといいでしょう。



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(来歴)H30.12 文章見直し

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