焼戻し(やきもどし)     [y08]

焼入れした品物を700℃程度以下の適当な温度に加熱して、硬さや組織を調節する処理が焼戻しです。

高合金工具鋼などでは500℃付近で再硬化します。それを「2次硬化」といいますが、その温度以上の焼戻し処理を、特に「高温焼戻し」と言って区別していう場合があります。(高温焼戻しに対応するのは、低温焼戻しと呼ばれます)



SCM435の調質における機械的性質SKD11の熱処理硬さ曲線

左はSCM435の調質、右はSKD11の焼入れ焼戻しの硬さなどの推移を示す熱処理曲線です。

構造用鋼などの調質は、品物の表面と内部の硬さなどの機械的性質を均質にする目的で500℃以上の焼戻しをします。
そのため、通常はこのグラフのように、低温域は示されておらず、このような温度範囲について示されています。
また右図のように、工具鋼などでは焼入れ温度の影響が大きいので、ここにあるように、焼入れ温度が示されている場合も多いようです。

焼戻しは、焼入れ後に硬さや機械的性質を調整するために再加熱する処理です。
炭素鋼や低合金鋼では、左図のように加熱温度が上がるにつれて硬さが低下しますが、右図のようなSKD11などの高合金鋼では、500℃付近で硬さの上昇がみられるものがあります。これが2次硬さです。

SKD11は高い硬さの工具類などに使用されることが多いので、その多くは200℃前後の焼戻しによって、高硬さの状態で使用されますが、高温特性を良くしたい場合などには、520℃以上の温度で焼戻しをします。その場合に「高温焼戻しする」といって区別する場合もあります。

低合金鋼での焼戻し回数は1回で問題ありませんが、高合金鋼の場合は、焼入れ終止温度や残留オーステナイトなどの影響があるために、低温焼戻しであっても、必ず、2回以上の焼戻しをする必要があります。

こわい硬さの話・・・

この場を借りて、硬さだけで品質を考えるのは「こわい」という内容の話を2つ紹介しておきましょう。

一つ目は、例えば、高速度鋼をある硬さにしようとすると、焼入れ温度を変える場合と、焼戻し温度で硬さを調節する場合があります。

工具鋼の場合は、焼入れ温度を変えることは少なく、品物の硬さに応じて、焼戻し温度で硬さを調節します。

でも、考えてみると、最良の熱処理条件は「1つ」のはずです。
これは、個々に検討する項目が多いので、どちらが良い悪いの問題ではありませんが、硬さ結果だけでは、目的の機械的性質が得られるのかどうかは、硬さだけではなく、工程仕様を含めて考えていなければなりません。

例えば、耐熱性を高めるために「焼入れ温度を高めにする」というものであればいいのですが、焼入れ温度がどうであっても、焼戻しによって、硬さを簡単に合わせることができてしまう怖さがあるので注意しないといけません。

二つ目は、測定したところの硬さだけが正しい。「だけ」というところがポイントです。

硬さ検査で測定した値は信頼できます。しかし、例えばロックウェル硬さであれば、測定できる部位は「重心で安定した平面」ですので、その部分の硬さは正しいというだけで、それ以上の保証はほとんどありません。

例えば、とんがった刃先の硬さがどうなっているのかや、奥まった部分の硬さはどうなのかは、ほとんど測定できないので、実際にはわかりません。

焼戻し硬さは温度と時間の関数(焼戻しパラメータの話)ですので、とんがった先端の硬さは低くなっている可能性は高く、品物中心の硬さも測定部位と差がある可能性は高いのです。

ISO9001を取得していると、このようなことに関して、「妥当性の確認」が求められます。要するに、それらの問題に対策して確認しておきなさい・・・ということになっています。しかし、現実問題、指定された硬さは、測定できる部位の硬さになっていることの保証以外はできませんので、確認を求められても解決は難しいと言えます。

それならどうすればいいのか?・・・ということになると、これも簡単にはいきません。

そこまで制約を受けたり、要求があれば、熱処理すること自体が難しくなるのですが、このような問題を考えることが、例えば工具寿命を延ばす一つの方法であるかもしれないということを、頭の片隅においておくのも無駄ではないでしょう。



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