鉄鋼の焼ならしについて [y07]
鉄鋼の焼ならしは、通常、機械構造用炭素鋼などをオーステナイト化温度まで加熱後、空冷する処理で、結晶粒の微細化や均一化をすることで、機械的性質の調整などの目的で行う熱処理です。
焼準(しょうじゅん)といわれることもあります。
「焼ならし」と表記されるのは、JIS規格以前の熱処理工業会規格JHSで「焼ならし」と表記していた流れからで、JISでも「焼ならし」の表記になっています。
焼ならしの温度は、JISなどでは表記されなくなっています。 過去には、焼入れ温度より高めの温度をとるようにしていることも多かったのですが、オーステナイト化すればいいことで、また、温度を上げすぎるとオーステナイト結晶粒が大きくなるので、焼入れ温度と同じ焼ならし温度をとる … と考えておくといいでしょう。
この再加熱してオーステナイト化温度から空冷するのが「焼ならし」で、油冷や水冷をするのが焼入れと考えるとわかりやすいでしょう。
この焼ならしは、空冷しても焼が入らない(硬くなりすぎない)鋼種に行うもので、機械構造用炭素鋼(SC材)などが対象ですが、低合金鋼でも調質と焼なましの中間の強度が欲しい場合には簡単便利な熱処理です。
ただ、SNCM447などの比較的焼入れ性のよい鋼種は、硬さが高くなりすぎるので、この場合などは、下の「ノルテン」などを併用する場合があります。
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「ノルテン」という業界用語について
SCM435などを焼ならしすると、焼なましよりも硬くて、調質ほどの硬さでなく、組織も均一になるので、焼戻しをして目的硬さにする場合があります。
また、焼ならし後の硬さが高くなってしまって、機械加工がしにくい硬さになる場合には、硬さを下げるために、焼ならしした後で、さらに焼戻しすることがあります。
これは業界用語で「ノルテン」と称されます。
Normalizing+Tempering から由来しているようですが、焼入+高温の焼戻し(=調質)以上に、全体硬さは低くなりますが、表面かたさと内部の硬さの差が少なくなるので、それを目的にノルテンを行う場合もあります。
焼ならしを省略できる場合も
近年は、製鋼メーカーの圧延のまま(これをアズロール:AS-Rool といいます)の出荷状態での品質は非常に向上しているとともに、安定しています。
これは、上にも書いたように「連続鋳造+圧延」で一貫作業で製鋼されるうえ、圧延後の冷却床(れいきゃくしょう)などが整備されて均一に冷却されている物がほとんどであるので、その工程で焼ならしをされた場合と同じような状態になっています。
メーカー製品の硬さのばらつきも少なくなっているので、この硬さのばらつき面だけを見ると、焼ならしの必要性は薄れてきているといえます。
しかし、鍛造で成形された品物などでは、冷却時の各部の温度が異なることも多いので、この場合は焼ならし(または「焼なまし」も有効)によって、組織や応力の均一化のために再加熱するのは有効的な場合が多いと言えますし、肉厚寸法差の大きい品物では、ノルテンなども検討するといいでしょう。
焼ならし後の硬さのイメージは、焼なましよりも高い硬さで、調質(焼入焼戻し)よりも柔らかいという感じを持っている人も多いのですが、本来の目的からいえば、焼ならしで硬さを上昇させることではなく、結晶粒の調整であることに注意しておきましょう。
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