焼入れ性曲線 [y04]
焼入れ性は表面硬さの入りやすさや硬化深さを表しますが、概念的な言い方で、「焼入れ性」自体が数値化されたものではありません。
それを数値化した試験方法の一つに、ジョミニー一端焼入れ試験方法があります。
こらは、焼入れ性の低い(つまり、急速な冷却が必要な)鋼種に適用できるものですが、試験片の端面を水冷して焼入れることで、焼入れ性を、端面からの硬さ推移で示されます。
得られた結果を示したものは、「ジョミニー曲線」といい、これによって、焼入れ性の良し悪しがわかるようになっています。
ここでいう「焼入れ性」は、①焼入れ端の硬さ ②その硬さの低下度合い で判断します。
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ジョミニー焼入れ性試験はφ25の丸棒端面を水冷して焼き入れる方法で、丸棒外周は空冷されるので、焼入れによる硬化程度や空冷による硬さなどを知ることができます。
上図に「焼入れ性の良い鋼」とありますが、空冷でも焼が入る鋼は、端面からの硬さが変わらない直線になるので、非常に焼入れ性の良い鋼はこの試験は向いていません。
また、焼入れ性の良い鋼種の多くは、焼入れは水冷ではなく、油冷をする鋼種もありますが、この試験では油冷をすることはありませんので、焼入れ性が高くて、本来は油冷する鋼種も水冷によって試験されます。
そのことから、焼入れ性の高い鋼種にも不向きなところがありますが、構造用鋼などで、同条件で数値を比較できるので便利な点もあります。
この試験で、一定の焼入れ性を持った鋼種を「H鋼(えっちこう・えいちこう)」といい、例えば、通常の鋼種はS45C SCM435などに対して、S45C-H(またはS45CH) SCM435-H(SCM435H)のようにJISでは「焼入れ性が保証された鋼」として独立しています。
ただ個人的な見方ですが、この焼入れ性に関する規格などが検討されたのは1970年代以前で、当時と比べて鋼材の製鋼技術も品質も非常に向上しているにも関わらず、この規格の本質は変わっていないので、現在では、H鋼を使用すべき理由がないように思います。
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(来歴)R2.2 見直し 最終確認R6.1月