特殊鋼         [t21]

【用語の意味】

鋼は鉄(Fe)と炭素(C)の合金ですが、その他の合金元素(Cr、Mn、Moなど)を加えて、強さなどの機械的性質や耐食性などの化学的性質を付加させたものを「特殊鋼」といいます。

その範囲や種類は非常に多く、JISでは「特殊鋼」は、普通鋼(SS400など)、鋳・鍛鋼に対応する用語で、さらにこれは、合金鋼、工具鋼、特殊用途鋼に分類され、それぞれが、用途別(機械構造用や工具用など)や製品形態(棒、板、帯など)で分類されていて非常にわかりにくく、曖昧になっている感じもします。

鋼種名からそれが何に分類されているのかがわかるようになっていますが、一般の方にはかなりわかりにくく、全体を理解するのが簡単ではないのですが、今更、それをどうにかするのも大変な状態になってしまっているように思います。

これらの鋼種は、一般的には、特定の特性を得るためには、それに合った熱処理やその他の加工を加えることでその特性を活かす必要があります。


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【補足説明】

JIS規格のG0204に鉄鋼用語(鋼製品の分類及び定義)という規格がありますが、これを見ても、専門以外の方はわかりにくいと思いますので、ここでは、熱処理を考えた場合から分類をして、その全体像を理解できるように考えてみました。

鋼に要求される代表的特性としては、①強度(硬さ) ②じん性(ねばさ) ③耐化学性 ④耐熱性 などがあります。

強度が必要な場合は炭素量を高める必要がありますし、さらに、大きな品物でも硬さが得やすいように、焼入れ性を高めるための元素(Cr、Mn、Niなど)が有効・・・というように、複雑な合金化でそれらの特性を高める工夫をされて鋼種として分類されています。

しかし、合金元素が付加された鋼種であっても、製作製造工程の途中で、あえて熱処理が不要のものもありますし、熱などを加えると特性が変化してしまうものなどもあって、「特殊鋼」という言葉をうまく分類するのも難しくしているのですが、これらを、(完全ではありませんが)特性と用途及び材料例について簡単にまとめてみました。

特殊鋼簡易分類表 第一鋼業

ここにあるステンレスや耐熱鋼、低温鋼、磁性鋼などには、すでにメーカーで熱処理などの加工がされた状態のものや、あえて熱処理などをしないものもあります。ここでは、熱処理をすることで特性を変化させることができるものについて説明を加えます。

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鋼の性質から言えば、全てに優れる鋼はありません

基本的には、合金元素を加えることで先に上げた特性が付加されます。しかし、多く加えるのがいいということではありませんし、鋼材コストの問題もあるので、それらをうまく均衡させるようにした製品が「鋼材」として販売されているということになります。

このことをいいかえると、今後も、少し成分などを変えることによって、新しい鋼材が出てくる可能性は無限にあるということになりますし、特に工具鋼などの分野では、少しの元素含有量の違いが鋼材特性に大きな変化を与えますので、特許などの申請時にはできるだけ広い成分範囲をとっているものの、実情は、狭い範囲での成分調整をして鋼材が製造されているということも少なくない状況です。

この合金元素のうち、最も鋼材の性質に及ぼす影響が大きい元素は「炭素(C)」で、これが強度その他の特性に最も影響します。

硬さと強さは同じ関係で、硬さを上げると強くなります。しかし鋼にはもう一つの重要な点があり、例えば、上の4つの特性(強度、じん性など)はすべて相反する性質になっているということに注目する必要があります。
炭素量と硬さの関係
硬さHRCと引張強さTSの関係 第一鋼業引張強さと硬さの関係

たとえば、焼入れして硬さを上げるためには適当量の炭素量が必要で、それによって強度は増しますが、反対にじん性や耐熱性は低下してしまいます。

また、ステンレス包丁などに使われるステンレス鋼は焼入れ硬化する鋼種が刃物用途に使われますが、ステンレス鋼であっても、耐食性はあまり良好な部類ではありません。

これらの特性と製品用途については、経験的な面を含めて大まかな選定のための分類があり、それが、JISでは機械構造用鋼、工具鋼などの分類になっていますが、特にそれにこだわる必要はまったくありません。

例を挙げると、熱間工具鋼に分類されるSKD61は、じん性の高さから、冷間用の高靱性刃物材に適していますし、ベアリング鋼として分類されるSUJ2は、炭素工具鋼のSK105よりも安価で焼入れ性が良いなどから、高い硬さの機械部品や刃物材として適していると言えます。

これらをうまく使いこなすためには、幅広い知識や経験が必要になるのですが、このように、そういう鋼の特性を知って材料と熱処理を考えていくと、安価で高性能な製品づくりに結びつくでしょう。

(参考)そのような内容を説明している書籍などが少なくなりましたが、「不二越 知りたい熱処理」はいい本ですので、鋼材と熱処理を勉強される方は検索して探してみてください。



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