特殊鋼 [t21]
鉄鋼の製造分類では、下図のように分類されます。
この「鉄」は「鋼」を作る元になるものですから、JISでいう「鋼」の「特殊鋼」は、普通鋼(SS400など)や鋳・鍛鋼ではないものが「特殊鋼」です。
「鋼」の製造割合は、統計的には、普通鋼が全体量の約8割をしめています。
そして鋳鋼・鍛鋼は全体量から言えば少ないので、たくさんの鋼種がある「特殊鋼」ですが、全体製造量の2割程度の量が特殊鋼です。
全体量の8割を占める普通鋼のほとんどは、橋梁鉄骨や軟鋼板で、製品として出荷され、このHPにある焼入焼戻しなどの熱処理が関係しない鋼で、残りの2割程度の「特殊鋼」について、このHPにある熱処理が関係します。
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さらに特殊鋼の分類の内訳は下表のようになっています。
概算の数字で表すと、日本では毎年、1億トン弱の鉄鋼生産があるので、毎年2000万トンの特殊鋼が製造されていることになります。
一番右側はJISの鋼種名の一部で、これ以外にもたくさんの鋼種があります。
つまり、いろいろな鋼種名があっても、その生産量は微々たるものも多いということです。
その生産量ですが、全量に対して2割で2000万トンの特殊鋼の約半量がS40CやSCM435などの機械構造用鋼で、金型部品などに使われる工具鋼は全体の約0.2%(20万トン)ですし、切削工具用に使われる高速度鋼(ハイスと呼ばれています)は全体量の0.004%(4000トン)という年間の数字です。
筆者作成
このHPで、色々な熱処理について紹介しているのですが、個々の鋼種について紹介しようとすると大変だということがなんとなくわかっていただけると思います。
そのような少量の工具鋼ですが、その熱処理は非常に重要です。
オールマイティーな鋼種はありません
なぜこんなにたくさんの鋼種があるのか … と疑問に思われたことはありませんか?
これをきっちり説明して理解していただくのは難しいのですが、ここでは、イメージを感じていただけるように簡単に紹介します。
鉄鋼の強みは「強さ」
5mmぐらいの丸棒を考えてください。 鉄鋼は、熱処理をすることで、簡単に手で曲げられる状態から、コンクリート釘のように、硬いところに打ち込める物などに変化します。
この性質・特性は他の金属には見られません。
この性質は、鋼中の炭素量によって決まります。
鋼の炭素量の最大は2%ですが、焼入焼戻しをして、硬さを調節するには相応の炭素量がないとその操作ができません。
ただ困ったことに、炭素量を増やしても、品物が少し大きくなると、焼入れしても硬くなりにくくなりますし、硬い部分は品物のごく表面しか硬くなってくれません。
それを助けるのが「合金成分」です
鋼は、鉄と炭素の合金ですが、そのほかにもいろいろな合金元素が加えられた合金になっています。
その合金元素には、 ①焼入れ性を高めるもの(Mn Crなど) ②耐摩耗性を高めるもの(Cr Si Vなど) ③耐熱性、耐酸化性などを高めるもの(Cr Mo Wなど) … などがあります。
例えば、品物が大きくても十分な硬さはほしいのであれば、MnやCrの含有量を上げればいいのです。
しかし、何かの特性をあげるための合金元素は、適量でないと効果が出せません。 さらに、適量でないと、その他の性質を阻害します。
そのために、最適な鋼種が自由に選べるように … ということから、たくさんの鋼種が作られています。
すべてに優れる鋼種が作れないので、たくさんの鋼種から最適なものを選んでほしいということです。
最適なものを選ぶのは難しいので「用途別分類」を参考にして選ぶ
その中から、目的に合った適材をどのように選ぶのは難しいことですが、JISではそれを上の表のように「用途別」に分類していますので、それを目安に選ぶといいことになります。
ただ、年間生産量のところで触れましたが、全ての鋼種が作られていませんし、鋼材サイズもまちまちなので、入手する場合の問題もあることを知っておいてください。
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