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等温焼なまし(とうおんやき~)[t17]

組織調整と軟化のために、焼なまし温度に加熱後に、パーライトが生成しやすい温度で保持して、等温変態させ、その後は空冷する焼なまし方法です。

等温焼きなましの説明図

この図の点線部分は、オーステンパーなどの恒温熱処理を説明したものですが、このオーステンパーは、550℃付近のパーライトノーズにかからないように、それ以下の温度に急冷し、その温度を保って変態を完了させることでじん性の高いベーナイトなどにする方法です。

それに対して、この等温(恒温)焼なましは、パーライトノーズ以上の温度で保持して、Ps→Pfで生じるパーライト変態をさせる方法です。(例:オレンジの線)

等温(恒温)処理をするために、ソルトバスなどを用いて処理をします。

この図のように、低合金鋼では、恒温にする時間は比較的少ないのですが(この図では1分程度)、焼入れ性の良い鋼種では、これが右側に移行して、長時間処理が必要になってくるので、若干の懸念があります。


この図では、温度が水平になっている部分でパーライト変態が完了しているので、その後は図のオレンジ線のように空冷しても、鋼は硬化することはないのですが、高合金鋼など焼入れ性の良い鋼種では、このS曲線も複雑で、さらにS曲線自体も未知の鋼種も多いので、この図のように単純に効率よく処理ができるとは限りません。

つまり、等温焼なましの主目的は「軟化」で、対象とする鋼の多くは高炭素、高合金鋼では「炭化物を球状化させること」が目的になるのですが、それらの鋼のS曲線は右側(長時間側)になっているものが多く、恒温変態させるためには、長い時間が必要になります。

また、変態完了後の冷却中に低温域でベイナイト変態などの好ましくない変態が起こる鋼種もあります。

そのために、このような高炭素・高合金鋼などの鋼種は、通常の完全焼なましで比較的簡単に球状化が進むこともあって、このような等温変態をさせることはなく、普通の処理としては、徐冷しながらパーライト変態を起こす方法のほうが実用的なので、ほとんどこの等温焼なましはおこなわれることはありません。

私自身もテスト以外はこの等温焼なましを実施したことがなく、理論的に説明できる熱処理方法であっても、これを行う長所や利点があるように思いません。



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