電子ビーム熱処理について [t15]
電子ビームを用いて加熱して行う熱処理のことです。
電子ビームを用いた金属熱処理の原理は「レーザー熱処理」とよく似ています。
電子ビームを鋼の品物の微小表面に当てて、移動しながら急速加熱すると、ビームが切れたところで品物に熱をとられて急速冷却されるので、それだけで焼入れができるというものです。
加熱部分が小さいので、電子ビームを遠ざけると、熱伝導で品物に熱が移ることで急冷され硬化します。
電子ビームやレーザーを用いた熱処理方法は、現在では、小さな品物や小さな刃先部分などが主体ですが、大きな品物の金属の熱処理への適用もこれから進むでしょう。

レーザーも電子ビームも共に、微小部分に絞り込んで加熱できますので、電子部品や金属以外の応用研究が主流で、その研究過程で派生した熱処理です。
レーザーは「光」ですが、電子ビームは「電子」の粒子ですので、レーザーに比べて加熱域が大きく、電位差で加速できるなどもあって、応用できる範囲が広いとされている技術です。
現在では、上図にあるように、電子ビームを用いた溶接、微細加工、表面改質などが行われています。
現在の多くは、電子ビームやレーザーで加熱した後に、母材への熱移動が急冷の源になって硬化する仕組みを利用していますが、微小部分の急速短時間加熱であるので、このHPで説明しているような全体加熱や高周波焼入れのような熱処理とは異なりますが、微小な先端部分だけを硬化させる用途は広がっていくでしょう。
ただ、焼入れするだけで焼戻しをしないで使用される場合が多いために、このHPで説明している熱処理とは別の特殊なものと考えた方がいいでしょう。
ただ、レーザーや電子ビームを使った熱処理をして好結果が得られるということは確かでですので、製品への適用や研究は今後進んでいくでしょう。
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