熱処理用語の解説

DS(ディーエス)ハード    [t12]

第一鋼業(株)さんが行っている窒化処理の呼び名です。 処理の内容は、「ガス窒化」に分類されるものです。


この処理は、複合窒化処理の一つで、窒化に加えて、その他の化合物層を生成させて、窒化による耐摩耗性の向上以外の効果を得ようとするもので、雰囲気ガスの性状を変えた各種の処理が行われています。


DSハードをしたこの表面 電子顕微鏡によるDSハードによる硫化物の様子

この写真は、品物の窒化処理に加えて、雰囲気ガスに硫化ガスを加えることで、品物の最表面に硫化物を生成させ、その潤滑性で製品寿命を向上させる処理をした製品表面の状態です。 

窒化層の上に1μm程度の厚さで硫化物が張り付いており、この硫化物が潤滑性・含油性を高めているようです。

処理する温度が550℃程度以下なので、550℃以上の高温焼戻しをする鋼種に対して行うことでその効果が発揮されます。

つまり、窒化温度が550℃前後ですので、冷間工具だけではなく、熱間工具の寿命延長に有効で、品物の硬さに合わせた処理ができることも特徴です。

窒化層の深さや性状で寿命が変わるので、第一鋼業さんでは、数種類の処理条件を決めて鋼種や用途に応じた処理をしているようです。

一般的に、表面処理は寿命延長につながることが多いのですが、費用対効果などを含めると、採用するかどうかの判断が難しい場合も多いようです。

表面処理が寿命延長には有効な手段ですが、何に対しても、「絶対に良い」というものはありません。

寿命向上のためには、処理内容を変えてみるなどで、良い結果を得られる処理条件を探すことも大切なことで、長期的にいい処理方法を見つけることが必要です。




↑記事のTOPに戻る


(来歴)R2.2 見直し   R2.4 CSS変更   確認R7.4月

用語の索引

あ行 あいうえお
か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ



その他の記事

鋼の熱処理について

この熱処理について教えて下さい

ソルトバス熱処理

せん断刃物技術の基礎

↑記事のTOPに戻る