熱処理用語の解説

金属でいう超合金 (ちょうごうきん)とは [t08]

子供用のおもちゃで「超合金」というシリーズのおもちゃがありますが、これは亜鉛合金のダイキャストで作られたもので、金属用語でいう超合金は、合金量の多い金属という意味合いです。

おもちゃの「超合金」は、非常に「強い」金属というイメージが強い感じですが、金属でいう超合金は「スーパーアロイ」の日本語訳で、それは、「超合金」とは言わずに、ほとんどが高い硬さ、耐熱性、耐酸化性などに優れる金属という内容ですので、高い硬さのものは「超硬合金」、耐熱性耐酸化性のものは「超耐熱合金」と言っています。


耐熱合金

耐熱要素の強いものでは、鉄鋼の分野では耐熱鋼(JIS記号はSUH***など)やオーステナイト系ステンレス(JIS記号はSUS*** ) があり、それらよりも耐熱性の高いものが超合金の分野になります。

主な用途ではジェットエンジンやガスタービン部品、燃焼室用などで、溶接棒などに加工されなどで、さまざまな用途に使われています。

これらは普通は「超合金」とは言わずに 超耐熱合金 と呼んで分類されます。

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超耐熱合金には、大きく分けて、①鉄基合金系  ②コバルト基合金系  ③ニッケル基合金系 があります。

そして、多くの製品名があるのですが、ほとんど「固有の商品名」で呼ばれており、鉄基合金系では「インコロイ***」、コバルト基系では「ステライト**」、ニッケル基系では「インコネル***」「ハステロイ***」などの名前で流通していますので、これらの名前を聞いたことがある方もおられるでしょう。

鉄基合金 の耐熱合金のうち、概ね、鉄の含有量が50%以下の合金量のものが超耐熱合金に分類されます。

ちなみに、鉄鋼製品で合金割合が最も高い粉末ハイスなどには、Fe以外の合金量が40%に達するものがありますが、耐熱合金との違いは、耐熱合金は炭素量(C)が低いことが特徴です。

粉末ハイスには、非常に耐摩耗性が高い鋼種もあり、なかには、硬い炭化物を作るために2%を超える炭素量の鋼種がありますが、炭素は耐熱性を低下させるので、用途的には低炭素のものとは全く用途が異なります。


下の表は、耐熱鋼と耐熱合金の例と、およその成分値をピックアップしたものです。

ここでは、鉄鋼の耐熱鋼とはかなり違う成分であるところだけをみておいてください。

耐熱性とは、高温の耐食性、耐酸化性、高温強度などに優れていることですが、これに伴って、耐薬品性なども高いものが多いです。

高温での変形に対する強度があることから、これらは鍛造などの成形加工ができないので、鋳造や溶接した後にグラインダなどで整形するのが通常の加工法になります。

高温強度を保つ方法で、「マトリックス強化型」と呼ばれるものと、析出硬化を利用する「析出硬化型」があります。

これらの中では、鋼種ごとに決められた熱処理が規定されるものもあります。 この熱処理は、鉄鋼と同じように、マトリックス強化型では、1000℃以上の高温状態から急冷する「固溶化処理(溶体化処理)」が、析出硬化型では、固溶化処理と700℃程度までの時効処理が行われます。


非常に硬い合金 : 超硬合金

硬い」超合金分野では、切削工具などに用いられる、超硬合金 がよく知られています。

この基本のタイプは、硬質のWC(タングステンカーバイド)をコバルトやニッケルを結合剤にして焼結して作られています。

近年は、タングステン炭化物以外の Ti・Ta などの硬い炭化物粉末を混合するものや、さらに、工具の刃先につけた超硬合金に表面処理によるコーティングをして長寿命化された超硬工具製品もたくさん作られています。


一般的には、超硬合金の Co の量は3~25%で、それ以外は硬い炭化物の粉末で、Co が多いほど耐衝撃性は優れます。 しかしCoが高いと、逆に、耐摩耗性は落ちます。

例えば、鋼での耐摩耗性が最も高い粉末ハイスと超硬合金を比較すると、(イメージ的な数字ですが)、超硬合金はマイクロビッカース硬さで1.5倍、吸収エネルギー(じん性)は1/2という感じになっています。

超硬合金と鉄鋼種では、工具の使用法が全く違いますので、これらの特殊な合金は、かなり鉄鋼からはかけ離れた性質のものだといえます。



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用語の索引

あ行 あいうえお
か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ







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