熱処理用語の解説

焼入れ操作の中断焼入れについて   [t07]

焼入れ冷却途中に水や油から引き揚げて、焼割れ・変形防止や硬さ調整などを行う方法を中断焼入れといいます。

時間焼入れ、2段焼入れ、段階焼入れ などという言い方も同様のものです。

実際の熱処理では、このような方法は、特に指定されなくても、常時行われています。


通常の熱処理では、一気に完全に常温まで冷却しない

通常の書籍に書かれている熱処理は、小さな試験片が用いられいるので、例えば、油焼入れでは、焼入れ温度から油中に品物を入れて、油の温度になるまで冷却して、それを取り出して常温まで放冷する操作を「焼入れ」としています。

しかし、現場の熱処理では、大きな異型の品物を油中に入れると、各部の冷却程度の違いによって、変形や割れの懸念が付きまといます。

そのために、焼入れ冷却中に、品物の温度差を軽減するために、様々な冷却のコントロールが行われます。


特に焼入れ冷却時には、品物各部の温度を一定にして、一様にマルテンサイト変態させることが望ましく、それが変形を抑えるための、一つのポイントになります。

このため、硬い硬さが必要な工具製品の変形を制御したり、工具性能を考えた焼入れでは、冷却中に水や油から引き揚げて、内部や部分の温度を調整することは絶えず行われています。

それが、この中断焼入れや時間焼入れと言われる方法です。

このような冷却操作は、変形の低減や焼割れの危険性の回避、硬さ分布の改善 … などのために行います。

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焼入れの基本は「柔らかいパーライトなどの組織を出さないように、一定温度まで急速に冷却して、マルテンサイト変態にかかる温度からは品物の表面温度を均一に保ちながら冷却することが基本です。

そのために、油からの引き上げ、撹拌の停止、流速の調整などによって、冷却速度を停止したり減速したりするとともに、表面からの冷却程度や内部の熱による復温などによって、温度を調節することで、変形や焼入れ状態をコントロールします。

しかし、そうは言っても、一般的に言えば、熱処理する品物の形状や鋼種で Ms点(焼入硬化し始める温度:マルテンサイト化温度) が異なるので、できるだけ、手順や方法を標準化するのが望ましいのですが、品物が雑多であれば、水や油の浸漬時間や引き上げ時間などの操作は、経験や勘に頼る部分も多いようです。


空冷やガス冷却で焼入れする高合金工具鋼製の大きな品物などにおいては、炭化物生成による性能低下の懸念から、600℃程度までは早い冷却が求められます。 しかし、冷却していって、Ms点に達すると、温度の低下とともにマルテンサイト変態は進むので、速い冷却は不要ですので、Ms点以降の冷却をコントロールすることで、性能を劣化させずに変形をコントロールできます。

このような空気焼入れ鋼(焼入れ性のよい鋼種)では、風の当て方や風量を変えることで変形を操作することができるなどで、変形を抑える作業方法が特許になっている例もあります。

しかし、変形を重視するあまりに冷却を遅らせることで、じん性などで工具性能を劣化させる懸念もあるので注意が必要です。

このように、工具の性能、変形の大小、冷却方法と熱処理品質は常に熱処理に関係しています。


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(来歴)R2.2 見直し   R2.4 CSS変更   R7.9月に見直し

用語の索引

あ行 あいうえお
か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ




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