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窒化    (ちっか)     [t06]

鋼の表面に窒素を拡散浸透させて、硬い「窒化物」を生成させて表面を硬化し、耐摩耗性を向上させる処理を窒化処理といいます。

窒化処理の方法は、ガス窒化、プラズマ窒化、真空窒化、軟窒化、液体窒化・・・など、いろいろな種類・方法があります。

深い窒化層を得るためには、事前の熱処理や窒化処理条件などで長寿命化のノウハウもあって、独自の処理名をつけて窒化処理を実施している会社も多いようです。

当社も、DS(ディーエス)ハードと称する複合表面処理を行っていますが、表面に生成する窒化物層の状態をかえることで、金型などの使用条件に適合するように処理条件を変えた処理を行っています。

鋼の表面硬化としては、浸炭焼入れ、高周波焼入れなどがありますが、窒化は、500℃前後の処理であるので、通常の全体熱処理(焼入焼戻しなど)をしておいてから、表面を研削などで仕上げた状態で、追加で行う熱処理です。

窒化によって高い表面硬さを得るためには、Al,Cr,Ti,V,Mnなどを含む鋼が用いられます。窒化用鋼のSACM645という窒化鋼がありますが、この内部硬さ(調質硬さ)は30HRCにして、最終的に窒化処理をしますが、もっと高い内部硬さが必要な工具などでは、これらの窒化のために必要な元素を含む工具鋼なども用いられます。

処理温度は500~600℃程度のために、事前の焼入れ焼戻しでは、窒化処理温度以上の焼戻しをしたものに窒化します。

窒化によって表面の硬さは焼入れによる硬化をはるかにしのぎ、SACM645では1100HV程度の硬さになります。

また、処理温度が500℃以上であれば、浸炭や高周波によるマルテンサイトによる硬化とは異なり、焼戻し温度近くまでの表面硬さが落ちにくいという特徴(耐熱性)があるといえます。

ただ、浸炭や高周波焼入れでは、1mm以上の硬化層がえられるのに対して、窒化では0.1程度の浅い硬化層しか得られません。

(注)この説明はイメージ的で、窒化の方法、鋼種、処理温度、処理時間で変わります。ここでは紙面の関係があり、詳しい説明はしませんので、書籍等を参考にしてください。

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窒化した品物の寿命などの効果については、単に硬化深さだけによるものではなく、その窒化深さや窒化したときに生じる硬化層の性状などによって効果(品物の寿命)は変わります。

そのため、窒化の状態を説明する際には、表面の「化合物層(外部窒化層)」と「拡散層(内部窒化層)」について、断面硬さ推移や顕微鏡組織から、その良否などについて説明されることも多いようです。

たとえば、化合物層は顕微鏡で見ると腐食しにくく白く見えることから「白層」とも呼ばれますが、一般的には脆いために、これを現出させない様にして硬化深さを調節する方法などの処理の条件などが検討されます。

「軟窒化」は窒素とともに炭素を浸透させる処理ですが、ガス窒化などの窒素だけを浸透させる処理に比べると、硬化層は薄いという問題はあるものの、製品寿命の増大効果がある場合など、様々な特徴があります。

このほかにも、窒化層や化合物層を多層化することなどや、その他の表面処理を複合させる表面処理などもあって、製品の寿命を長寿命化させる処理や研究もたくさんあります。

そしてこれら、表面処理の全般に言えることですが、通常の熱処理に加えて表面処理の費用を付加しても、その費用に見合った寿命などの効果が得られない場合も出てきます。


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(来歴)R2.2 見直し   R2.4 CSS変更   最終確認R6.1月

用語の索引

あ行 あいうえお
か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ

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