地きず (ぢきず) [t05]
鋼の仕上がり面で、肉眼で見える程度のピンホールやブローホールなどの、鋼の表層や内部にある非金属介在物や砂などの異物によって生じる鋼材の欠陥を地疵(地傷、地キズ)といいます。
通常、製鋼過程で生じたものをいうため、加工傷や割れはこれには含みません。
近年は、製鋼技術の向上で、この欠陥に遭遇することも少なくなりました。
地きずなどの内部欠陥があると、機械加工をしているときにキリコ(切り粉)が途中で途切れたり、その形状や出方が通常とは異なるので、もしも鋼材に異常があれば、機械加工する熟練者が意識しておれば、意外に機械加工中に分かるようです。
この人間の感覚は、非常に重要です。
現在では、出荷される鋼材は探傷検査などで全数検査されている場合が多いし、圧延肌の材料であれば探傷検査では発見されないか、判定基準に満たないものは「合格」となっている場合もあります。
さらに、表面に露呈していない内部の欠陥は、検査基準にかかりませんし、一部分に偏在するものなどは工程間の検査で判別されないこともあります。
もちろんそれらは受入検査をしても見つけるのは容易ではないので、機械加工時に異常のあるなしを判断する意義は大きいといえます。
このような状態で発見された場合のほとんどは、明らかに非金属介在物の規定に外れているのですが、経験的には、少量品種の工具鋼などで数年に1回程度異常が報告される程度です。
PR大量生産されている構造用鋼など、ほとんどの鋼では品質検査が厳格なこともあって、ほとんど考えなくていいほどに高品質になっていますので、鋼材の出荷検査精度や現状以上の高品質をメーカーなどに要求する必要もないといってよいでしょう。
工具鋼や特殊な鋼種では多品種少量加工が多いために、自動で無人加工するケースが比較的少ないことから熟練作業者の勘で加工中の異常に気づくことが多いのですが、自動化された大量品の加工では鋼材の異常に気づきにくいかもしれません。
このように、機械加工時の加工者の知識や経験や勘が欠陥を発見したり鋼材の異常に気づく場合がしばしばあります。
熟練した作業者は、焼きなましの不具合や調質品の硬さ分布や組織の状況までを五感で感じて切り込み量や回転数を調整して作業しています。
このような感性を高めることは大切ですので、特に、新入者などには、OJTなどでこのような知識について教育していくことは大変有意義で重要なことです。
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