第一鋼業株式会社~熱処理用語 炭化物

炭化物 (たんかぶつ)     [t03]

炭素と金属元素の化合物を炭化物といいます。

炭化物は、鋼の焼入れ温度で素地(マトリックス)に溶け込むものと溶け込まないものがあり、その素地に溶け込まない炭化物には、硬さの高いものが多く、この量や大きさによって、鋼の耐摩耗性が大きく変わります。

この、焼入れ温度で素地に溶け込まない添加物を、共晶炭化物と区別して呼ぶ場合がしばしばあります。

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炭化物の硬さ

熱処理の話では、鉄の炭化物「セメンタイト」がしばしば登場します。

少し見にくい図ですが、このセメンタイトの組成は、Fe3Cですので、鉄と炭素の化合物ですが、図の一番左の硬さの低い部類なのですが、例えば、炭素鋼の焼入れ時の最高硬さが800HV程度ですので、セメンタイトは1500HV程度の硬さで、非常に硬いものです。

このセメンタイトは、焼入れするために鋼の温度を上げると、オーステナイト中に溶け込むもので、共析炭化物といいます。

その他、2次硬化するときに析出して硬さを上昇させる炭化物も共析炭化物といえます。

それに対して、焼入れ温度でオーステナイト中に溶け込まない炭化物を共晶炭化物で、この共晶炭化物は種類によって硬さや形態が異なります。

特に硬さの高いVC(バナジューム炭化物)などはMC系炭化物と言われ、上図の一番右のもので、ビッカース硬さで3000を超えるものもあります。

鋼の焼入れ組織(マルテンサイト組織)の硬さは800HV程度、非常に硬い窒化層の硬さでも1300HV程度なので、それら以上に炭化物は非常に硬いために、耐摩耗性に寄与します。

図の右から2番めのWC(タングステンの炭化物)をコバルトで固めたものが超硬合金ですが、これも非常に硬く、また耐熱性があることから、切削工具に使用されているように、鋼中の炭化物の種類や大きさ、量などが耐摩耗性い大きく影響します。

もちろん、耐摩耗性が高くなるとじん性が低下する傾向になるので、炭化物量の多い「粉末高速度鋼」などでは、炭化物の微細化や均一化を図ってじん性の低下を防いでいます。

下は工具鋼の代表であるSKD11(日立金属のSLD)の焼入れ焼戻し組織です。
カタログでは、クロム系の炭化物が約15%あると説明されています。

SLD

この白い塊が炭化物で、共晶炭化物であるので、焼入れ時の加熱では消失しないもので、優れた耐摩耗性はこの炭化物のおかげです。

しかし一方では、大きな炭化物はじん性を阻害するするため、その量や分布は鋼の性質に大きく影響します。

逆に、じん性の必要な鋼は、共晶炭化物を少なくしたり、小さい炭化物を均一に分布させるなどでじん性が低下しないようにして製造されます。

切削工具用の高速度工具鋼などでは、さらに高炭素+高合金化をして炭化物量を高めていますが、じん性低下が避けられないことから、粉末冶金によって製造した粉末ハイスも、広く使われるようになってきています。

ハイスなどの高合金工具鋼は、耐熱性を高めるために500℃以上の高温焼戻しをしますが、焼入れによって素地に溶け込まない共晶炭化物に加えて、焼戻しで微細な炭化物が析出して非常に高い硬さになります。

これを2次硬化といい、これに寄与する炭化物は素地に溶け込んだ炭化物が焼戻しによって析出して、焼戻しをすることで焼入れ時の硬さ以上に硬化します。



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