鉄鋼製造には欠かせない鉄スクラップ [s25]
ここでは、鉄鋼の廃材(鉄スクラップ)のことで、鉄鋼は廃材をリサイクルして、新しい鋼の製造に利用されています。2023年の統計では、鉄源の31%が鉄スクラップです。
そのために、鉄鋼の生産国である日本は、鉄鋼廃材のリサイクル率は70%を超えていることで、鉄スクラップの輸出国でもあり、良質のスクラップは高級鋼の製造に名なくてはならないものです。


多くの方は、「スクラップ」という言葉から「不要なもの」「どうにも使い物にならないもの」と考える人もいるかもしれませんが、鉄スクラップが無ければ製鋼によって新しい鋼を作ることができなくなります。
噂の域を出ませんが、日本が第二次世界大戦に突入した理由は、アメリカによって、石油と鉄スクラップの輸入を止められたことだといわれるように、鉄スクラップはそれほどに重要で、製鋼中の溶湯の成分調整や温度調整に用いられます。
製鉄所では、鉄鉱石とコークスなどを原料にして製鉄をして、製鋼工程を経て製品になるまでを一貫工程で鉄鋼製品が製造されています。
これに対して、製鋼所は製鉄設備を持たない工場を言います。
製鋼所では、フェロアロイと呼ばれる鉄合金とともに、鉄スクラップを用いて製鋼して棒鋼、板材、型鋼などの製品に仕上げられています。
全鉄鋼製品製造量の約8割は構造用普通鋼と呼ばれる熱処理をしないで使用される鉄鋼類で、その低合金低炭素の鉄鋼廃材は、価値の高い鉄スクラップ資源となっています。
特に、工具鋼などの合金を多く含む高級鋼のみならず、低合金の普通鋼においても、良質の鉄スクラップが不可欠であり、そのリサイクルの仕組みがあって鉄産業全体が動いているといえるでしょう。
すなわち、良質の鉄スクラップがあってはじめて高性能な鋼がつくられていると言えます。
このために、製鋼に使用される鉄スクラップは、合金成分が少ないものが好まれます。 それは、製鋼中に加えるときに成分の調整がしやすいためで、さらに、取り扱いしやすい形状のものが好まれます。 反面、工具鋼やステンレス鋼などのスクラップは普通スクラップの用途は特定のものしか利用できないので、普通鋼(低炭素出てい合金の)スクラップに比べると、あまり好まれません。
ただ、ステンレスや工具鋼のスクラップは、鋼種ごとに分別することなどで、特定用途向きのスクラップにできるので、分別すれば普通鋼のスクラップよりも高額で取引されるケースもあります。 もちろん、それらは、同系統の鋼種の製鋼用に使われます。
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