熱処理用語の解説

水靭(すいじん)について       [s24]

高マンガン鋳鋼(または高マンガン鋳物)などを固溶体化処理することを水靭(すいじん:水靭処理)といいます。

これは、オーステナイト状態になるように赤熱加熱した温度から急冷(普通は水冷)をすると、常温でも安定したオーステナイト状態になり、この処理をすることを水靭をいいます。


JISなどに規定されたマンガン鋼(SMn***)は、C:0.5%以下、Mn:2%程度以下の成分ですが、ここでいう高マンガン鋼は、0.8%以上のC量で、Mnを大量に(10数%)加えた鋼で、常温では比較的柔らかいオーステナイト状態になっています。

鋼では、オーステナイト状態のものは、オーステナイト系ステンレス鋼がよく知られていますが、これらの多くは0.1%C以下の低炭素鋼で、Cr・Niを多く含有することで常温でオーステナイト状態になるようにした成分系になっており、耐熱・耐酸化性が非常に高い鋼ですが、低炭素の鋼なので、そんなに硬くはありません。

しかし、この高マンガン鋳鋼は、炭素量が高いので、「鋼」ではなく、「鋳物」の分類のもので、鋳型を用いて鋳造するか、溶接棒にして、耐摩耗性を付加するために、肉盛溶接して使用します。

このような特殊な成分で、常温でオーステナイト状態で、非磁性で比較的柔らかいのですが、変形を加えると加工硬化して表面が非常に硬くなる性質があります。

この性質を用いて、土木機械の切り刃部分や爪の先端などに鋳鋼品が、また肉盛り溶接してその部分の補修で用います。

つまり、フォークなどで土砂や石を割るような場合には、変形をする際に非常に硬い組織に変化します。 そのために、通常のバイトなどによる機械加工はできません。

この鋼は、鋳込み状態では脆い状態であるのでオーステナイト化温度(900~1000℃程度)に加熱後に水冷することで、安定したオーステナイト状態の鋳鋼(または鋳鉄)になり、通常は、そのオーステナイト状態のままで使用されますが、高マンガン鋳鋼は上記の、変形すると硬化する性質があるので、機械加工はできないので、もしも成形加工が必要な場合はグラインダーなどで成形して使用します。


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用語の索引

あ行 あいうえお
か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ





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