質量効果(しつりょうこうか)[s15]
熱処理のうち、特に焼入れでは、品物の質量や断面寸法が大きくなるにつれて、焼入れ時の冷却が遅くなり、表面硬さの低下や硬化深さの減少が生じます。
それを「質量効果によって硬さが出にくくなって・・・」などと表現します。特に、数値が示されているものではありません。
これはSCM435のφ25・φ50・φ100の鋼材の焼入れ硬さと焼戻し硬さの資料ですが、焼入れしたままの硬さを見ると、径が大きくなるにしたがって、表面硬さも内部硬さも低下している様子がわかります。
この図は、調質(500℃以上の焼き戻しをして、表面と内部の機械的性質を調整する処理)により鋼材径の大きさに伴う質量効果を示したものです。
このように焼入れするときの品物の寸法が大きくなるにつれて硬化しにくくなることを「質量効果」「質量効果が大きい」「質量効果のために・・・」というような言い方をします。
要するに、「品物が大きくなると急冷されにくくなるので、焼入れ性のあまり高くない鋼種は硬さが出なくなる…」という意味合いの内容が含まれていると考えるといいでしょう。
PRもちろん、質量効果を表現する数値などはなくて、それは、漠然とした内容の言い方です。
これを言っている側も、適当なイメージで言っている感じが強く、「品物が大きくなってくると、熱処理のカタログに書いてあるような状態と変わってきて、焼入れしても、表面硬さが低下するし、内部の硬さはさらに低くなっていますよ」という意味合いを含めて言っているという程度に考えていればいいでしょう。
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