熱処理で多く使われるロックウェル硬さについて [r12]
鉄鋼の熱処理品の硬さについては、JISにはこのロックウェル硬さ試験機を用いて測定した硬さをロックウェル硬さ以外に、ブリネル硬さ、ビッカース硬さ、ショアー硬さなどがあります。
このうち、高硬度の製品に対しては、このロックウェル硬さがよく用いられます。
ロックウェル硬さ計には、硬さ単位の異なるC・A・Bなどのスケールがあって、それぞれ測定方法がJISなどで決められています。
このうち、鉄鋼の硬さ測定では、比較的、Cスケールを用いたHRC硬さがよく用いられます。
①「ろっくうぇる・しー・かたさ」 ②「エイチ・アール・シー・かたさ」などと称されています。
ロックウェル硬さ測定
硬さの表記は 60HRC のように書き、「えっちあーるしー60」 といい、これは、ロックウェル硬さ試験機のCスケールで60という値 … ということです。
この硬さは、指定のダイヤモンド圧子を150kgで押し込んだ時の押し込み深さで硬さを算出するもので、熱処理後の硬さが高いほど、荷重をかけた時にダイヤモンド圧子が侵入しにくいので、それを数値で表示しています。
ロックウェル硬さは再現性が高く、測定値のばらつきも少ないので、鉄鋼の焼入焼戻し品では多用されています。
以下は、参考に読んでいただくといいでしょう。
ここで、硬さは奥深いという話を紹介します
硬さについては、(どんな硬さ値であっても)奥が深いところがあって、たとえば、私自身で鉄鋼品の焼入れ硬さの最高値は72HRCです。
これは、熱処理した品物をロックウェル硬さ試験機で測定した数字が72だったというだけということなのですが、この意味することを少し紹介しましょう。
JISの考え方でいうと、JISに沿って管理された試験機で、同様に値付けされた「硬さ基準片」に対する硬さが再現して測定できることを要求しています。
この結果、管理された硬さ基準片を管理された硬さ試験機で測定した硬さが「制度範囲内で正しい」ということが保証されているのですが、ただそれだけのことで、その硬さ試験機で測定した品物の測定部分の硬さが72HRC というだけのことです。
これは変な言い方ですが、例えば、表面が硬くて、内部が少し弾力がある品物では、もっと硬い硬さが表示できるようになる可能性もあったり、熱処理品では、品物の測定位置は限定的ですから、ともかく、測った一の硬さが 72HRC という以外のことは言えないということで、JISでは、そのような実際の硬さ測定については言及していません。
もちろん、通常の鉄鋼製品では強さ(引っ張り強さ)と相関があり、硬さ値と耐摩耗性の関係などはある程度理解されているので、要求硬さはそれを担保するものといってもいいのですが、製品を測定した硬さ値は、絶対的な数値ではないということを頭に入れておいてください。
ただ、その中でも、このロックウェル硬さは、再現性が高いこともあるなど、いろいろな面で信頼性が高いと評価されて、よく使用されています。
硬さ値が高いと言っても、それが耐摩耗性などの機械的性質に対応しているかそうでないかの指標にはなっていないと信頼できないというものの、JISに規定されているブリネル硬さ、ビッカース硬さ、ロックウェル硬さ、ショアー硬さは硬さ相互の換算表もあるので、JISに基づいて測定された硬さは信頼できると考えていいことは間違いありません。
PR硬さは強さの代替値
一般的には、硬さ試験が簡便で客観的であるために、引張強さなどの代替として使用されている品質を保証する重要なものです。
ただ、品物を測定した場合の硬さ値は、品物の影響を受けるので、その測定値がどういうものなのかを理解することが大切ですが、理解するのが難しいかもしれません。
だから、測定の仕方が変わると数値が変わるものなので、単純に、硬さ換算表があっても、完全にすべての硬さ値範囲で硬さとの関係が相応しているとは言えませんので、どの品物の部分を、どのように測定したものであるかということまでを意識できれば安心でしょう。
JISには硬さ試験方法や硬さ試験片について規定されるなどでの標準化は進んでいて、ロックウェル、ブリネル、ビッカース、ショアーなどの硬さは一般的に通用しますし、現在では、硬さに対するトレーサビリティー(国家標準の硬さに追従している仕組み)が確立されてきているために、硬さ値自体の正確性は高いものです。
しかしそれは、先に書いたように、JISなどで定めた試験機や硬さ基準編を用いた範囲内での正確性であって、実際の硬さ試験をする上では、いろいろの不正確になる要因があります。
そのために普遍的な正確な硬さ測定をするためには、検査作業員を認定するなどで技能を習熟して硬さの正確性や安定性をはかることなどで補完されています。
そして、硬さ相互の関係(たとえば、ロックウェル硬さとショアー硬さの関係など)は、もともとは何も関連はありませんが、簡便的に硬さ換算表が用いられていることも知っておいてください。
JISには「硬さ換算」に関する規定がなくて、ASTMなどの換算表を利用しているのですが、熱処理の品質保証は取引の基本ですので、アメリカでは、古くからこの関係を作って商取引に便利なように、「硬さ換算表」が整備されてきましたので、ほとんど支障なく使えるもので、使い方を間違えなければ問題は起こりません。
JISのハンドブックなどにはこのアメリカのASTMの「硬さ換算表」が掲載されており、ブリネル硬さ、ショアー硬さ、ビッカース硬さなどとの換算ができるとともに、引張強さの値も換算できるので、強さとの関係を把握できて大変便利になっています。
過去には引張試験片を同時に熱処理するなどで機械試験値を保証するものもありましたが、近年は、硬さの信頼度が上がったこともあって、硬さ以外の熱処理後の試験はほとんど行われていません。
このように、ある意味では、引張試験よりも、再現性のある硬さ試験の信憑性が高いのですが、しかし、それは、あくまで、測定した部分の硬さであって、とくに、機械設計者などは、品物の機械的強度を保証するものではないことを把握していなければならないことを頭に入れておいてほしいので、重ねて書いておきます。
(来歴)R2.2 見直し R2.4 CSS変更 R7.9月に見直し













