炉(ろ) [r11]
熱処理では加熱するための「加熱炉」設備のことをいいます。
写真は第一鋼業(株)の協力で、加熱設備の一部を紹介しながら説明します。
以下に示す「炉」の分類や呼び名は決まったものではなく、正式な呼び名はないと言ってもいいでしょう。
これはメーカー(および使用している側)などが勝手に適当な名前を付けているもので、決まりや統一性はありません。
第一鋼業の場合でも、設備番号で呼ぶ場合、設備を購入したメーカーの呼び名を利用している場合、さらに、勝手に名前をつけて呼称している場合があって、完全には呼び方が統一されていません。
特定の呼び方は、決まっていないということを念頭に、以下を読んでください。
【台車炉】台車炉は、品物を台車に乗せて出し入れできるものです。この炉では最大10トンの品物を1100℃まで加熱することができます。熱源は都市ガスです。
これは、次に説明する「バッチ炉」といってもいいものですし、大気雰囲気で加熱しますので「大気炉」でもいいですし、「ガス炉」といってもいいのですが、大きくて、主に焼入れ用に使用するものを、このように呼んでいるだけです。
これは、耐火レンガを多用して、主として大気雰囲気で加熱する「焼入れ用」に作られているため、約500℃以下の温度精度(温度分布)はあまり良くありません。
このように、何かの理由で炉の特徴付や分類をされることで、様々な名称をつけているのですから、名前が同じと言っても、同じ仕様ではない場合がほとんどです。
PR一般的には、熱源は都市ガス以外に灯油、重油、電気など様々なものを用いて加熱します。ただし、大型の炉では、燃料費の面からか、電気炉の大型炉は少ないようです。
焼入れ時には炉から取り出して空冷、油冷、水冷などを行います。写真では、手前に油槽が見えます。
【バッチ炉】1回ごとに品物を入れ替えるタイプをバッチ処理といい、横型タイプの炉を総称してバッチ炉と呼んでいます。
バッチ炉の用語の反対語は、「連続炉」というのが近い感じで、この連続炉も、搬送方法によって、様々な名前がつけられているのが通例です。
この炉は大気雰囲気の都市ガスを用いた焼戻し炉で、700℃程度までの加熱が可能ですが、焼入れ炉などの、これ以上の高い温度が必要な炉は、大気雰囲気の加熱では脱炭や酸化が大きいために、雰囲気炉や真空炉が使用される傾向にあります。
このように、バッチ炉であっても、その形態はいろいろあり、雰囲気置換のための場所を持ったものや、炉内で焼入れから焼戻しまでを自動的に行う炉までも「バッチ炉」に分類されるものもあります。
また、それらの雰囲気調節や真空処理などの付帯設備を含めて「炉」と称される場合もあり、分類や呼称は決まっているものではありません。
【ピット炉】横型のバッチ炉に対して、縦型の炉をピット炉といいます。
特に長尺品の焼入れでは、品物を吊り下げたり、真っ直ぐ立てることによって、品物の変形を少なくできるという特徴があります。
これについても、雰囲気や冷却のための付帯装置などもあるのですが、それらの分類や呼称も様々です。
【真空炉】
第一鋼業(株)の鉄鋼熱処理用の例でいえば、真空炉には3種類のタイプがあります。すべて電気加熱式で、左上は油冷装置を備えた2室タイプの焼入れ炉、右上は一般的な窒素ガスによる加圧冷却可能なタイプ、下左は加熱時のみ真空にして炉外で冷やすタイプです。
上2つは炉内で冷却するので光輝状態で仕上がりますが、左のタイプは加熱中の脱炭を防ぐために真空を利用しているだけのもので、焼入れ時は空気中に取り出して油冷、衝風空冷をします。
いずれも、大気加熱など、雰囲気調整しないタイプと違って、加熱中の酸化や脱炭が極小なので、熱処理後の仕上げ代は極端に小さくなります。
現在は、窒素ガスによる冷却するタイプは大量の窒素を圧力を上げてタンクに貯めておいて、それを一気に流して冷却する「加圧冷却」という方法がとられるものが多くなっています。
これは、窒素ガスの圧力や流量を多くすれば、油冷に近い冷却速度が得られますが、実際には風量をあげすぎると変形しやすくなる・・・などの理由で、油冷と同様までに強烈に冷却させることはほとんどありません。
【ガス窒化炉】このタイプは、アンモニアの変成ガスを加えて加熱することで窒化処理をするものです。雰囲気中に、例えば、硫化水素ガスなどを入れる等によって、複合化合物による窒化処理などもでき瑠葉になっています。
ガス窒化と呼ばれる窒化は、真空による脱気をして、500℃前後の温度に品物を加熱して、そこに鉄鋼表面の窒化を進行させるガスを流す表面熱処理をいいます。
【ソルトバス】
溶融塩をポットに入れて溶かしたところに品物を入れて加熱する熱処理を行う装置です。
加熱の熱源は、都市ガス、電気などをつかって加熱し、ポットに入ったソルトを間接加熱して溶融させています。 常用1000-1300℃の高温に加熱する、高速度鋼の焼入れ用には、ソルトの中に直接電気を流して加熱するタイプもあります。
写真右は作業風景ですが、例えば、温度に応じていろいろなソルトバスを用意しておいて、その中に品物を順次に入れる方法で加熱や冷却をします。
PR
(来歴)R2.2 見直し R2.4 CSS変更 最終確認R6.1月