第一鋼業株式会社~熱処理用語

冷却速度(れいきゃくそくど)      [r08]

鉄鋼の熱処理では、品物の冷え方(冷やし方)によって組織や硬さが変化するので、それを℃/時間 のように数値化して表示する場合があります。

これは、冷却の際の冷え方を、時間に対する温度の変化で表しているのです。しかし、(例えば、水や油に品物を入れて冷却する場合を考えると)連続的に等速度で冷却することは難しいし、そのような熱処理操作をすることもないので、数字で冷却速度を表すのは、特殊な場合だけです。

特に「焼入れ」においては、その冷却速度の違いによって、大きく組織や硬さが変化するため、それでは熱処理の状態を数値で評価ができないということで、下図のような連続的に温度を低下させた場合の組織や硬さを表現する方法で表示した図が作成されています。

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共析鋼に近い鋼のCCT曲線

これは共析鋼の連続冷却曲線(CCT曲線)の例で、小さな試験片と特殊な冷却装置を使って冷却速度を連続的に冷却した場合の組織や硬さを表しています。

ここでは、Psと書かれたパーライト生成やMsのマルテンサイト変態の温度や時間が重要になるのですが、普通の熱処理では、全温度域を連続的に冷却することはしないで、品物が大きくなると、組織変化による変形や焼き割れなどが発生しないように、冷却をゆっくりする等の操作をするので、連続的に冷却しない場合のほうが多いのです。

そのために、上図のような冷却速度に沿った熱処理をすることはほとんどありません。

そうは言うものの、この図は、測定した硬さから熱処理の状態がわかる、非常に便利なもので、熱処理方法や熱処理後の状態を推定できる、大変便利なものです。

ただ、これは特殊な装置での特殊な冷却方法によったものであるので、実用的な考え方として、全過程において連続的な速度ではなく、瞬間(比較的短時間)の速度や区間における平均の冷却速度を表す場合など様々な表し方をするものもあります。

瞬間の速度としては、500℃における速度、区間速度としては、800~500℃までの平均冷却速度・・・などですが、しかし、これらについても、小さな試験片では可能なものの、ほぼ実用的でないために、通常の品物を熱処理では、冷却材で冷却速度を感覚的に表現するしています。

これは、水、油、雰囲気ガスなどと、その撹拌程度などを加えて表現する・・・などですが、これも、決まった表現方法はありません。

冷却剤別冷却シミュレーションの例

この図は、シミュレーションソフトを使って小さな品物を冷却した過程を示しています。

これは、熱伝達を表現するパラメータ(比熱、熱伝導率、熱伝達係数など)を設定してコンピュータで演算して、品物の冷却の様子をシミュレートしていますが、通常の焼入における品物全体の冷却状況は非常に複雑なので、それを完全に計算でシミュレートするのは大変なことです。

実際の品物では、大きさや部位によって、温度降下の状態も、当然、まちまちになっていますので、冷却過程を推定する方法として、品物の硬さや組織から、先のCCT曲線などを利用して冷却の状態を(ある程度ですが)推定するということもあります。

ただ、実際の熱処理(焼入れ)では、パーライト変態が起きないようにMsまでをすばやく冷やし、Ms温度にかかるとゆっくり冷やす操作をするのが一般的で、このために、品物各部の温度差を和らげるために、Ms点(マルテンサイトに変態する温度)などを考えて一部分が冷えすぎないように引き上げる操作などをします。

これらもあるので、**℃/Sというような数値で評価されている速度表現があれば、温度範囲などの付帯条件に注目する必要があると言えます。

通常の熱処理(焼入れ)では、低温域(たとえば100℃以下)で連続冷却するのは困難です。そして、そうすることが現実的でないために、瞬間(比較的短時間)の速度や区間における平均の冷却速度を表す場合などもあって、冷却速度を表現する方法自体も決まったものはありません。

通常の熱処理作業においては、品物の大きさや形状で、冷却速度を調整することはしばしば行います。

その調節の方法としては、「中途引き上げ」があります。例えば、油冷した時に油の温度(通常は60~80℃程度)まで冷却せずに、途中で引き上げてMsにかかってから急冷しないようにすることなどが行われています。

それらの温度管理は、予備実験をして時間と温度変化を見たり、冷却過程で表面温度計を用いて品物各部の温度を測定する他、作業者の五感で品物の表面の温度の様子を判断して実施されています。



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