粒子分散強化について [r02]
熱処理現場などでよく耳にする言葉ではありませんが、簡単には、鋼が強化する機構(仕組み)の一つで、熱処理の例でいえば、高温焼戻しでの2次硬化や析出硬化型のステンレス(マルエージング鋼)などがこの原理によるものです。
これらの熱処理で硬さ(強度)が増す仕組みが「粒子分散強化」と呼ばれる仕組みで、鋼では、鋼に固溶した合金元素が、温度を上げると、炭化物などの異質の微細分子が、鋼の素地中に析出することで強度が増します。
この析出は、転移論(結晶の強さのもとは、結晶欠陥の一つ[=転移]によって生じるという考え方)では、鋼が塑性変形する際に、すべり面に沿って転位(粒子のズレ)が生じるのですが、その、転移の生じ方の程度が大きくなって強さが増す … と説明をされます。(厳密な内容は専門書をご覧ください)
鋼の強化機構には、析出、固溶、浸入、粒子分散 などがあって、二次硬化や析出硬化は析出と粒子分散が合わさったものと考えてよく、マルテンサイト変態は新しい組織が、焼入れすることで析出するもので、表面処理の「窒化」は窒素が鋼中に浸入するなどで、いずれも鋼の強化機構の一つとして説明されます。
転移と粒子分散については、鋼中に析出した異粒子が「転位」を妨げることで強さが増す … などとも説明されています。
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一般的には、析出物が微細な場合を「析出強化」といい、析出によって転位が大きく妨げるような場合を「粒子分散強化」といわれるようですが、これらについての明確な区別はないようです。
工具鋼の2次硬化やステンレス鋼の析出硬化(時効硬化)は、昇温によって素地中に炭化物などが析出することで転位が起こりにくくなるとともに、それとは別に、体積膨張などによる内部の圧縮応力の増加で強化される … という考え方で強化機構が説明されている場合もあります。