熱処理加工のJIS規格について [n09]
製品のJIS規格とは別に、熱処理加工についてのJIS規格があります。
俗に「加工のJIS」と呼ばれるもので、焼ならし及び焼なまし、高周波焼入れ焼戻し、焼入れ焼戻し、浸炭及び浸炭窒化焼入れ焼戻し、窒化及び軟窒化のほか、溶接後熱処理方法などについて、JIS規格が制定されています。
製品の品質規格を示すJIS規格は「製品のJIS」と呼ばれますが、加工のJISは、製品品質を規定しているのではなく、熱処理加工をした後の製品の品質を要求しています。
そのために、書かれている文言は、JISに基づいて熱処理加工する鋼材やその状態、品質項目、加工設備及びその精度、熱処理加工後の品質項目、表示の方法などが規定されており、熱処理した製品の品質を保証するために、これらについて社内規格などで規定し管理することをJISマークを表示する工場に求めるものです。
たとえば、JIS B 6913鉄鋼の焼入れ焼戻し加工 では、JISに規定する加工材料、加工の種類ごとにJIS問題の起こらないような加工方法で加工し、加工後の品質についても、JISに沿うことを要求しているので、JISにある要求事項のすべてを社内規格などで示して、さらに、加工や品質記録の管理保管などを行うのですが、熱処理関係以外の人が、このJIS規格票の文言を読んだだけではわかりにくいものです。
つまり、JISマークを表示しようとする会社(JISの認証工場)では、社内規格を定めて、JISマークを付ける製品に対する品質を保証する … ということのための規格と考えるといいでしょう。
JISの認証工場は「JISマークの表示許可工場」と呼びますが、JISマークを表示したいのであれば、この「加工のJIS」に沿って、JISや顧客の要求する品質が確保できる状態にあるかどうか審査されて、要求が満たされておれば、JISマークを表示して製品を送り出すことができます。
JISでは、製品や製品の加工能力がJISに定める以上であることを求めていますので、JIS認証工場であるということは、JISの最低基準以上の製造加工能力を保有しており、ハイレベルの製造管理能力があるという評価が得られるのです。
しかし、私の経験談をいえば、製品のメーカーではなくて、賃加工の熱処理工場がすべての出荷製品についてJISの要求に沿うというのは管理費用も掛かりますし、その費用を加工賃に上乗せするとお客様が逃げてしまいかねませんので、現実的には、JIS表示品は対象熱処理全体の1%以下という状況でしたが、それでも、JISに沿う加工ができる工程能力があれば、どのような大手の注文にも応じられるし、要求を満たす加工ができるという状態にあるということになります。
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以下に、このHPに関係する、熱処理の加工のJISのJIS規格番号と名称を示します。興味ある方は、WEBでも規格票の内容が閲覧できますので、一度、どんなものか、見ていただくといいでしょう。
規格は定期的に見直されています。また、過去には JISは「日本工業規格」でしたが、コンピュータ関連などの新しい分野も加わったために、2019年に「日本産業規格」というように呼び方が変わっています。
JIS B6911 鉄鋼の焼ならし及び焼なまし加工
JIS B6912 鉄鋼の高周波焼入焼戻し加工
JIS B6913 鉄鋼の焼入焼戻し加工
JIS B6914 鉄鋼の浸炭及び浸炭窒化焼入焼戻し加工
JIS B6915 鉄鋼の窒化及び軟窒化加工
(来歴)R2.1 見直し R2.4 CSS変更 R7.9に見直し