軟点(なんてん)という熱処理用語について [n04]
熱処理の焼入れをした時に、硬化していない部分、または、他よりも柔らかい部分のことをさしています。
一般には軟点が生じることは好ましくないものですが、たとえば、全体焼入れで「水焼入れ」をした場合や、高周波焼入れでは、軟点が生じる場合があります。
水焼入れをする品物の例では、高温になった品物を水に浸漬すると、その接触部分で水が沸騰して水蒸気が生じ、それが膜となって急速な冷却を妨げるので、その部分が硬化しないで、しばしば、硬さが柔らかい部分が出ます。
これを防ぐためには、水冷の際に、品物を強く振ったりして蒸気膜層を飛散させて水が循環するようにすることで「軟点」が出るのを防ぐようにするのですが、それでも、少し大きな品物になると、完全に無くすることは難しいことです。
また、高周波焼入れの例では、加熱するピッチ(間隔)のとり方で「硬さの低い場所」ができることがあります。 それを「ソフトゾーン」という言い方をされる場合があります。
ソフトゾーンができるのは、例えば、丸棒の外周を移動焼入れ(通常は、棒を回転させながら加熱部分を移動しながら焼入れする方法)する場合に、焼入れ部が重ならないよう、そして、離れすぎないようにコイルの移動量を決めて焼入れをするのですが、そのピッチのとり方によって、コイルの移動ピッチの中間で硬さ低下が起きます。
これはある程度は避けられないことで、移動ピッチを小さくしすぎると、2回加熱される部分が出来て、結晶粒の粗大化による硬さ低下や焼割れが生じる … などの不具合が起きます。
これによって、表面の硬さを完全に揃えるのは現実的には難しく、いくらかの柔らかい部分(軟点)が生じるのですが、このような一発移動焼入れを行う高周波焼入れでは、製品表面を完全に焼き入れ硬さには、少しですが硬さのムラが残ります。
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